7102【源田環境政策課長】 それでは、武蔵野市公共施設の環境配慮指針について御説明をいたします。お手元のA3横長の資料のほうを御覧いただければと思います。
まず、策定の背景・目的についてです。御案内のとおり、令和4年4月に改定いたしました地球温暖化対策実行計画(事務事業編)では、市役所のエネルギー使用に伴うCO2排出量について、2013年度比で2030年度までに60%削減するという高い目標を掲げて取り組んでおり、この目標達成には、エネルギー使用量そのものの最小化を図ることが必要不可欠です。また、国の地球温暖化対策計画では、太陽光発電の最大限の導入と、ZEBの実現が地方公共団体に求められています。こうした状況を踏まえまして、市では今後、学校等の増改築が予定されていることから、公共施設の一層の省エネ・創エネを推進するため、このたび、エネルギー使用に特化した公共施設の環境配慮指針を策定したものでございます。
これから、ZEBと書きましてゼブと読む言葉がよく出てきますので、簡単にZEBについて御説明をさせていただきます。指針本編のほうの2ページ目を御覧いただければと思います。このZEBでございますが、ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディングの略でございまして、建物で消費する年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物のことです。エネルギー消費量を完全にゼロにすることはできませんが、まず、省エネによって使うエネルギーを減らした上で、創エネによって使う分のエネルギーをつくることで、エネルギー消費量を正味でゼロにすることがZEBとなります。エネルギー消費量の削減率の基準となる値は、建築物省エネ法に基づき、地域区分や建物用途、室用途、床面積等に応じて算出される各建築設備の一次エネルギー消費量の合計値となります。その基準に対し何%削減できたかによって、4つのZEBの段階に分けられ、これらをまとめてZEBと総称しています。
A3の資料のほうにお戻りください。次に、策定までの検討のフローについてです。武蔵野市が達成すべきエネルギー消費性能のレベルや備えるべき設備等に関する基準を定めるに当たり、国や他自治体の動向、市のエネルギー使用の状況・現状を把握した上で、市のモデル施設を選定し、具体的な省エネ・創エネ技術の導入可能性について検討を行いました。
1つ目、社会動向と公共施設の現状把握です。昨年度東京都では、都有施設の改築等においてZEB化を目指していくため、現行仕様を改正したほか、港区では、省エネのみでZEB Ready(50%以上削減)とする区有施設環境配慮ガイドラインの改定を行っており、国よりも高いZEB化を目指す自治体も出てきたところです。
次に、本市の公共施設のエネルギー消費傾向についてです。浄水場やクリーンセンター等の特殊な施設を除き、図2のとおり、エネルギー消費量のうち、約4分の3が電力を占めており、エネルギー消費量の最小化と同時に、電力の再エネ化が重要となります。また、図3のとおり、エネルギー消費構成では、小・中学校で4割近くを占めていることが分かります。
2つ目に、指針の主たる対象となるモデル用途についてですが、1)から7)の7つの視点により、改築モデルとして小学校、コミュニティセンター、保育園、改修モデルとして文化施設を選定しました。
裏面をお願いいたします。3つ目に、モデル施設として選定した4施設の現地調査を行い、設備等の使い方を把握した上で、省エネ・創エネ技術の導入を具体的に検討いたしました。昨今の標準的な仕様において設計したケースや、可能な限り省エネ仕様としたケースなど、各ケース別に一次エネルギー消費量とコストの試算を行いました。
対策ケース別の比較検討結果のまとめを一番下に記載しています。まとめの1つ目として、省エネ対策だけでは50%削減が難しいケースもありますが、創エネを含めれば50%削減は可能であること。2つ目として、可能な限り省エネ・創エネ対策を実施したケースのイニシャルコストは、標準的な仕様のケースと比べ一、二%の増で収まるとともに、光熱費の削減も可能であることが分かりました。
一方で、庁内ヒアリングの結果、実際に既に増改築の設計を進めている施設によっては、創エネを含めても50%削減が困難なケースもあることが判明し、これらを踏まえた整備水準の設定が必要となりました。
次に、指針の内容について御説明いたします。対象とする施設は市有施設とし、対象とする建築行為は、建築物省エネ法において、省エネ基準への適合が義務化されている建築行為としています。
市が目指すべき整備水準についてです。モデル施設の検討や庁内ヒアリングの結果を踏まえ、エネルギー消費性能水準は、第一水準としてZEB Ready(一次エネルギー消費量50%以上削減)、第一水準の達成が困難な場合は、第二水準として、最低でもZEB Oriented相当(一次エネルギー消費量を30%から40%以上削減)とすることと、未評価技術を導入し、さらなる省エネを図ること、いずれの条件も満たすこととしました。創エネ設備については、原則設置としています。また、エネルギー消費性能水準を達成するために採用すべき創エネ・省エネ手法をリスト化しました。
なお、本指針につきましては、部署を横断した庁内委員会を設置し、検討を行ったものですが、策定に当たっては、有識者による客観的な評価も必要と考え、エネルギー地産地消プロジェクト有識者懇談会のメンバーを務めていただいた、千葉大学大学院の林准教授に講評をいただきました。講評内容につきましては、別添の参考資料としてお配りしておりますが、おおむね評価をいただくことができたと考えております。
最後に、今後の運用方法についてですが、整備水準の適合に向けて確実に検討を進めるため、計画・設計・施工段階において、施設の所管課及び設計・施工担当課と環境政策課の双方により適合状況の確認を行うとともに、竣工後3年間はエネルギーの使用状況を確認し、フォローを実施していく予定です。
なお、本指針は、令和5年6月1日より運用を開始しております。
説明は以上です。