15052【小内資産活用課長】 それでは、旧赤星邸の利活用に関する有識者会議の報告等について御説明をいたします。旧赤星鉄馬邸の保存とその庭の一体的な利活用により、この環境を将来につないでいくため、様々な取組を行いながら検討を進めてきたところでございますが、このたび、有識者会議内容をまとめましたので、御報告するものでございます。A4資料の1、2、3につきましては、冊子の報告書で御説明をいたします。
報告書の2ページを御覧ください。まず、第1章の2、会議でございます。会議は、旧赤星邸とその庭を保存しながらどのように活用していくか、維持管理や運営の在り方などの検討に資する意見を聴取し、助言を求めるため、令和4年10月に会議を設置し、令和6年1月までの間に計8回開催をいたしました。会議では、現在に残るレーモンド建築の価値を再確認するとともに、これまでの歴史を重視して、専門分野の異なる8名の委員により、多岐にわたる御意見をいただきました。
会議設置要綱及び構成員の名簿につきましては、もう一つの資料編の2ページから5ページに掲載しておりますので、別途お目通しをください。
また、図表1にお示しのとおり、会議では、並行して市において実施した市民ワークショップや、社会実験等において収集した市民意見等も参考に御意見をいただきました。
4ページからは旧赤星邸の概要についてまとめております。敷地概要のほか、6ページでは建物概要、それからA3判折り込みの8ページから13ページにかけては、現況平面図や現況立面図を添付しております。
また、14ページでは、参考図として、現状の樹木図と、また、保存樹木32本に対して、令和5年7月に実施した診断結果をお示ししています。この中で、空洞率や樹勢によりCの不健全と評価された2本のうち1本については、倒木による周辺への被害を避けるため、伐採等の対応をしていく必要があると考えております。
15ページからは、赤星鉄馬と設計者のアントニン・レーモンドについての簡単な解説と、また、16ページでは、近代モダニズム建築についての解説、それから、旧赤星邸の歴史的背景や所有者等の変遷について触れています。
17ページ以降は経過をまとめております。適宜、こちらについては行政報告してまいりましたが、資料編に全て参考資料としてまとめておりますので、こちらについても別途お目通しくださいますようお願いします。
25ページをお願いします。ここからが第2章として、利活用検討に向けて行った有識者会議での委員の発言をまとめたものとなります。委員会では、図表21にお示ししている流れに沿って意見交換を行っていただきました。
26ページからは、利活用検討開始に当たり会議に期待すること、今感じていることについての発言内容をカテゴライズして列挙しています。
29ページ以降には、検討を行う上で課題となる関係法令等についてまとめており、都市公園法における建蔽率の特例、それから建築基準法における用途制限などについてまとめています。
31ページ図表23には、所有者の変遷をまとめ、A3折り込みの32ページ図表24では、土地の変遷をまとめました。土地は、竣工時においては五日市街道に面しており、南側は、現在宅地分譲されている一団の部分も含めて敷地であったことや、北側や南側の敷地の一部をそれぞれ、鉄馬の次男や三男、長女に譲り渡しながら、接収時期を経て、修道女会が取得し、現在に至っているといった状況についてお示しをしています。
なお、竣工時から接収時代の変遷図の作成に当たりましては、接収前から南側にお住まいで、接収時も引き続き居住されていました、鉄馬の孫からの聞き取りと、住宅地図を基に作成したものでございます。
33ページには類似施設一覧、それから34ページから36ページまで、建物と庭の活用方法、管理運営上の工夫を調査するために視察を行った2施設について、結果をまとめております。
37ページを御覧ください。会議では、今後の議論につなげるため、保存と利活用のバランス、何を大事にするか、優先度をどのように考えるかということをテーマに御意見をいただきました。建物に関する保存と利活用については、建物は、歴史的背景や意味合いを読み取り、理解を広げながら、保存しつつ活用していくことが大切であるといった御意見がありました。庭、樹木に関しては、庭は設計図がなく、使っていく中で手を加えていった経緯だとすると、歴史的意味合いは低いことも想定されるが、少なくとも今ある緑を大切にするといったものに軸足があると感じるといった御意見がありました。
また、38ページ、建物と庭の一体性に関しては、市民からも一番に評価された点でしたが、この会議におきましても、旧赤星邸の価値を語る上で特に大切にしたい点であるとして、多くの御意見をいただきました。黒ポチの2つ目になりますが、建物の中と外の連続性というのは、レーモンドが日本に持ち込んだもので、旧赤星邸の1階のリビングも床が低く、庭とのつながりを持たせている、日本では半屋外で食事をするという文化はなかったが、そのような空間はレーモンドが導入した。旧赤星邸には藤棚のテラスがあるが、オリジナルの設計では藤棚ではなく、可動式のテントがあり、外のリビングとして設計されていた。この空間を生かして、庭でもあり、建物の一部でもある場所でお茶を飲むというのは、とてもよいプログラムになるし、よい仕掛けになると思うといった御意見がありました。
また、これに続いて3つ目の黒ポチ、後段となりますけれども、展示とすると時が止まってしまうけれども、レーモンドの建築に対する思いを反映し、庭を含めた生活シーンを見せ、これを生かした活動をすることで、展示が生きてくると思うという御意見がありました。
40ページをお願いします。旧赤星邸の価値や継承すべきものは何かを論点の1つ目に設定し、目指すべき将来像として、テーマやコンセプト設定につなげるため、これまでの会議における主な発言概要を列挙しました。そこから、41ページ図表26のとおり、キーワードを抽出し、それを関連要素ごとにまとめ、さらに大きな要素にまとめていくことで、2つのテーマ設定をいたしました。テーマの1つ目は建物と庭の関係、テーマの2つ目は暮らしの変遷・歴史です。
次に、42ページになりますが、この2つのテーマごとにコンセプトを設定しました。テーマ1に係るコンセプトの1つ目が、アントニン・レーモンドの建築の特徴である建物の中と外の連続性を生かした利活用を行うということ。それからテーマの2に係るコンセプトの2つ目が、歴史や文化的価値を次世代につなげていく、ここでの暮らしの変遷を知るといったものです。特に、43ページの竣工図の写真にもあるように、1つ目のコンセプトに関して、庭とのつながりを重視して全開口となるよう設計されていたオリジナルの窓のデザインは、その暮らし方だけでなく、建物と庭の関係性を裏づける技術であり、大事にしていきたいといった御意見がありました。
次に、45ページの四角枠を御覧ください。価値を最大限に発揮するために必要な工夫や仕掛けは何かを論点に、これまでの発言を要素ごとに分類した上で、旧赤星邸のオリジナル部分は原則として保存するということや、レーモンドの設計意図である建物と庭、部屋同士のつながりを重視して、竣工時の開口部や間取りなどの復元を目指すといった、7つの保存・復元、利活用に関する考え方に整理をいたしました。
そして、この保存や復元、利活用に関する考え方を踏まえ、整備の考え方についても検討を行い、A3判折り込みの50ページからの図表27ではゾーニング図に、また、52ページの図表28に、公園となる庭の活用も見据え、ユニバーサルトイレなどを含めた休息利用可能な休憩棟について、また、A3判折り込みの54ページ図表29にて、駐車場や駐輪場、バリアフリールートの設定も合わせた動線計画をお示ししています。
その上で、56ページから58ページとなりますが、具体的な利活用に向けた方向性や考え方を整理するため、具体的にどのような保存や活用を行うと効果的かを論点として、先に設定したコンセプトに沿って意見交換をし、7つの考え方に分類してまとめています。
次に、59ページを御覧ください。こちらから第3章、運営管理・維持管理についてまとめています。運営管理に関しては、利用・参加・活動の範囲として、いろいろな価値観を持つ人を集められるような仕掛けがあるとよいといった御意見や、市民の方々にとって日常空間とは少し異なっている空間というたたずまいをどうやって残していくか、非日常ではなく「異」日常のような場所でめでていただけるようになればよいのではないかといった御意見をいただきました。
また、プログラムに関しては、初めにあまり決め込まず、運用しながら模索し、みんなで議論しながら進めていく場になるとよいのではといった御意見があり、収益性や財源も含め、運営体制については、継続性と柔軟性を持って考えていかなければならないといった御意見がありました。
61ページには、運営管理と維持管理に関する御意見を整理しており、建物の価値を理解した上で、財政負担の軽減を図りつつ、利活用効果を最大限に引き出せるよう、公民連携によって収益性がある事業の実施を検討するといったことも記載していますので、62ページには民間活力の導入に関する事業手法について確認を行いました。
この事業手法や都市公園法上の管理運営体系を踏まえ、64ページに記載のとおり、想定される3つの管理運営体制案について、それぞれに効果や課題をまとめています。
最後、65ページ以降では、第4章として、保存活用計画の策定に向けてとして、本会議にて課題提起された事項や、異なる意見が出された事項として、藤棚の扱い、それから道路際にある既存塀の扱い、それから動線計画や料金徴収の在り方など、来年度以降に予定している保存活用計画策定において検討すべき点をまとめた上で、68ページにて、第5章として、今後の予定について記載をしております。
保存活用計画策定については、別途、A4判資料で御説明をいたします。資料の裏面を御覧ください。
今後、有識者会議における検討を踏まえ、登録有形文化財である旧赤星鉄馬邸の適切な保存と活用を図るため、文化庁が定める指針に基づき、保存活用計画を策定していく予定です。
保存活用計画では、どの部分が文化財としての価値なのかを調査し、保護や保存していくためのルールを定めた上で、文化財の価値を損ねることがない活用方法や範囲などを定めていくことになります。
また、保存活用計画は、国が示す指針に基づき策定をしていくことで、国や東京都から耐震改修や工事監理等に係る費用の一部について補助金を受けられる可能性や、計画の認定を受けることで、現状変更等に係る手続の特例を受けることができるようになります。そのため、令和7年度末までの2か年にわたり、有識者を交えた合議制の委員会を設置して、計画策定をしていきたいと考えています。
なお、この計画策定に係る費用の一部については、国や東京都から補助金の交付を受けることができる見込みとなっております。
今後の予定(案)は、記載のとおりであり、令和10年度以降の施設開設を目指していきたいと考えています。
説明は以上です。