
橋本しげき
映像ID: 2491
5762◯19番(橋本しげき君) ただいま議題となりました議案第53号 武蔵野市市税条例の一部を改正する条例に反対の立場で討論いたします。
この条例は、地方税法の一部を改正する法律の施行による地方税法の改正等に伴い提案された条例です。この条例の問題点は森林環境税です。年額1,000円を森林環境税として個人住民税の均等割に上乗せして、新たに課税するものです。課税は現在、東日本大震災を名目に上乗せされている復興特別住民税──これも年額1,000円です──この期限が切れる2024年度から開始され、国税として徴収されます。徴収された税収は都道府県を経由して、全額を交付税及び譲与税特別会計に直接払い込み、そして森林環境譲与税として、国が市区町村と都道府県に配分します。
使い道は、市区町村の場合、間伐や人材育成、担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用、都道府県の場合、森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用に限定され、インターネット等による公表が義務づけられます。武蔵野市の場合、2021年度には約1,200万円の森林環境譲与税が配分されており、公園の木製遊具設置などに使われています。譲与の開始時期は2019年度からとなっており、既に先行して配分が始まっています。2019から2023年度の間は、交付税及び譲与税特別会計からの借入れで対応し、後年度の森林環境譲与税の一部で償還します。
森林環境税は、2023年度末で期限切れとなる復興特別住民税を、看板だけ掛け替えて取り続けるものです。森林吸収源対策や森林の公益的機能の恩恵を口実に、国や温室効果ガス排出企業が引き受けるべき負担を、国民個人に押しつけるものであり、問題があります。
問題点の1つ目は、低所得者も一律負担となっていることです。個人住民税の均等割は、所得税が非課税となる方にも一律の額で課税される逆進性の高い税であり、その均等割への一律額の上乗せは、低所得者の負担をさらに強めるものです。
問題点の2つ目は、都市部に多額の配分がなされることです。譲与基準として、人口指数の割合が3割とされ、林業従事者指数の2割より高くなっています。このため人口の多い都市部に多額の森林環境譲与税が配分されます。森林面積が広く、環境保全が必要な地方の自治体よりも、人口の多い都市部の自治体に配分される森林環境譲与税のほうが多くなるという矛盾が生じています。さらに課税と譲与の開始時期がずれることで、譲与税特別会計からの借入れと償還が発生するため、600億円の満額が譲与されるのは、立法趣旨に掲げたパリ協定の枠組みにおける森林吸収源対策の基準年である2030年よりも後の2033年度からとなってしまいます。
問題点の3つ目は、企業負担なしの制度であり、温暖化対策と矛盾するということです。これまで地方自治体が独自に導入してきた地方版の森林環境税では、ほぼ全ての自治体で法人にも負担を求めているにもかかわらず、今回の森林環境税では法人に負担を求めていません。温暖化対策に必要な負担というならば、原因者である温室効果ガス排出企業に第一義的に負担を求めることが必要です。森林の持つ公益的機能を維持するための森林整備は重要な課題です。だからこそ国の一般会計における林業予算の拡大など、より安定的な方法で財源確保を行うべきです。
以上、森林環境税は復興特別住民税の置き換えであり、市民にとっては新たな税負担は生じないものの、税の徴収の方法として問題であり、賛成できません。もちろん今回提案されている条例は、国の法改正に伴うものであり、国の仕組みに問題があります。今回の市税条例改正に当たっては様々な事業が含まれておりますが、住民負担の問題として、森林環境税の徴収は条例の一番の問題点であり、多くの市民に影響が生じることから、今回の条例改定には賛成できないという立場を表明いたしまして、私の反対討論を終わります。
(22番 山本ひとみ君 登壇)(拍手)