
三島杉子
映像ID: 2491
5837◯20番(三島杉子君) ただいま報告がありました陳受5第14号 「消費税インボイス制度の2023年10月からの実施について再考を求める意見書」を政府に送付することを求める陳情に賛成の立場で討論いたします。
消費税導入時に小規模な事業者の事務負担や税務執行コストへの配慮から、事業者免税点制度が設けられました。適用上限額の引下げはありましたが、消費税導入のリスクから小規模な事業者を守るために、課税売上げが1,000万円までの方々には消費税納入の義務はなしとしてきたのです。
消費税は、売上げさえあれば赤字でも納めなければいけません。厳しい価格競争の中で、仮に消費税を外税で取っていても、自腹を切るぐらい実は価格を下げていて、実際には消費税を取っていないのと同じ、消費税の転嫁ができないという状況でも払わなくてはいけない。消費税は中小零細業者に厳しい税制だからです。
しかしインボイス制度導入で、コロナ禍や物価高騰で困難を抱えている方が多い中小零細事業者や個人事業主やフリーランスの免税事業者が、課税事業者になって新たに税負担をする。その税負担のための煩雑な手続に、多くの時間やお金を費やさなくてはいけなくなるということと、免税業者のままでいて、取引から排除されたり、値下げを求められたりするおそれがある──既にそういう事態が起こっているという話も後から出てきます──との二者択一を迫られます。どちらに進んでも厳しい事態です。
市内の小売店の方から、インボイス制度は本当に止めて、同業者で対応できないから店を畳むという人が何人も出ていると伺いました。陳情者の方は、インボイス事業者になったときの書類は複雑で量も多く、一人親方など、対応するのは厳しい、朝から書類だけに関わっているわけにもいかない、大変なことになるとおっしゃっていました。
電車やインターネットでは、インボイス対応の作業を代わりに行う有料のシステムを提供する会社の広告が目につきます。増税になるだけでなく、その対応にも時間やお金を使わざるを得ない。二重の苦しみではないでしょうか。
オンライン署名「《#STOPインボイス》多様な働き方とカルチャーを衰退させるインボイス制度に抗議します」は、既に20万筆を超えています。都内の自治体でも、インボイス制度の実施の再考、延期を慎重に求める意見書が、全会一致で可決されているところもあります。日本商工会議所、全国商工団体連合会、全国青色申告会総連合、全国中小企業団体中央会など、数多くの中小業者団体が、インボイス制度の廃止、見直し、凍結、中止などの意見を公表しています。日本税理士会連合会、日本脚本家連盟等も反対の声明を出しています。
声優有志でつくるVOICTIONや、小規模事業者に寄り添いインボイス制度に反対する士業の会、アニメ業界の未来を考える会、インボイス制度を考える演劇人の会、インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会など、様々な有志の会が声を上げています。個人タクシー運転手、農家、建築業、軽貨物ドライバー、作家、音楽家、エンタメ業界等の方からも、インボイス制度を止めての声が上がっています。
中小企業の経営者の方の、物価高騰の中でも売値に反映できない中小企業の現状、管理部門は大部分がワンオペであって、インボイス導入で、大企業の専用伝票や独自システムの対応にさらに時間が割かれていく厳しい状況を訴える声。
90%が免税業者である農家の方の、出荷場所が多くて、それぞれへの対応が厳しい、価格を転嫁できないのに肥料等が高騰、畜産農家は既に赤字の中、課税業者になれば農業を続けられないという声。
軽貨物宅配ドライバーの方の、ガソリン代高騰の中で、課税業者になれば生活が立ち行かなくなるが、課税業者にならなければ仕事は回せないや、10%支払いを引くなどと言われ、どうすればいいのかという声。
エンタメ業界の方の、コロナで8割の収入減で、多くの店が廃業の中、借金し、何とか生き延びてきて、ようやく規制が緩和されて、これからだというところで、新たにインボイスの問題。ライブハウスは、出演アーティスト、裏方の音響、照明等、多種のスタッフから毎月請求書を受け取り、自分で経理をしている人が多く、全てインボイス対応にするのは本当に現実的に厳しいのだという声。
声優の7割以上の方が年収300万円以下であり、インボイス登録で、一月分、約14万円の収入が吹っ飛ぶような増税になる。現役声優3割弱がこの制度をきっかけに廃業を検討しているとアンケートに回答している、その状況を訴える声。
建設業の一人親方の、インボイス登録で、課税業者になった場合、年収500万円で一月分の生活費に近い金額、約18万円もの新たな税負担になるという声。
様々な業界が厳しい状況に追い込まれていく制度です。
日本商工会議所の2023年度の税制改正に関する意見では、制度導入後の混乱が避けられない場合は、制度の導入時期を延期すべきであるとあります。
陳情者の方が、取引先からインボイスの登録をお願いされていると相談に来る方の多くが、仕入税額控除など消費税の仕組みや、インボイスを登録することで自身にどんな影響が出るかをきちんと理解できていない現状、日々の仕事をしながら、帳簿つけ、確定申告を行っている一人親方らが、10月実施への不安を感じている現状、免税事業者へ周知を十分に行えておらず、登録も進んでいない中で、特例措置を設けても、実務がより煩雑化するだけで、制度の根本的解決にはならないことを訴えておられました。
コロナ禍の影響、物価高騰と、生活が大きく圧迫されている中、厳しい経営、生活を強いられている方々に、さらに追い打ちをかけるように10月から実施とは、冷たい仕打ちではありませんか。陳情者の方は、とにかくせめて10月実施は待ってほしいのですと、せっぱ詰まってこの陳情を出されたとのことでした。
市民の生活、なりわいを守る、また文化や経済を支えていらっしゃる方々を守るために、「消費税インボイス制度の2023年10月からの実施について再考を求める意見書」を政府に送付することを求める陳情に賛成を改めて述べまして、討論を終わります。
(22番 山本ひとみ君 登壇)(拍手)