
与座武
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小学校高学年の教科担任制の本格実施に向けて等について
・小学校高学年の教科担任制の本格実施に向けてについて
・今日の武蔵野市の学校教育が直面している課題と対応について
・自治体間、災害時相互支援について
5892◯18番(与座 武君) 自由民主・市民クラブの与座 武です。事前通告に従い、一般質問をさせていただきます。
大きな1点目の質問として、小学校高学年の教科担任制の本格実施に向けてを伺います。
この夏、文部科学省は、来年度、小学校高学年の教科担任制を推進するため、全国で1,900人の教員を増員する方針を固めたとする報道がありました。当初の計画では、2022年度から4年かけて毎年度950人ずつ増やす予定だったが、来年度に2年分増員して、計画を1年前倒しにするというものでありました。
その理由として挙げられていたのが、教員の長時間労働を是正し、働き方改革を加速する狙いがあるとされました。確かに教員1人当たりの授業時間数(持ちごま数)を減らし、勤務時間中の空き時間を確保し、教員の負担軽減を図ろうとする狙いがあることは理解します。しかし、小学校高学年の教科担任制を推進することの主たる目的を取り間違えているのではないかと、この報道内容に大変違和感を覚えました。教職員の多忙化解消は、本腰を入れて取り組まなければならない課題とは認識していますが、学校教育は誰のためにあるのか。当然に、児童生徒の一人一人の資質・能力の育成に主眼が置かれなければなりません。
話が少し脱線しますが、私が大学生の頃、教員を目指していた仲間と、教職員は聖職者か労働者かなどと、今振り返ると大変青臭い書生論を闘わせていたことが懐かしく思い出されます。
さて、小学校高学年からの教科担任制に話を戻します。平成31年4月、中央教育審議会は、文部科学大臣から新しい時代の初等中等教育の在り方について諮問されたことを受け、令和3年1月、「令和の日本型学校教育」の構築を目指してと題する答申を出しました。多岐にわたる論点をまとめた、非常にボリュームのある、中身の濃い答申書であります。その中に、義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方と題したチャプターに、小学校高学年からの教科担任制の導入という項目があります。
いわく、義務教育9年間を見通した教育課程を支える指導体制の構築が必要である。
いわく、抽象的な思考力が高まり、各教科の学習が高度化する小学校高学年では、系統的な指導による中学校への円滑な接続を図ることが求められる。
いわく、個別最適な学びを実現する観点から、GIGAスクール構想によるICTの効果的な活用と、教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導を可能にする教科担任制の導入により、授業の質の向上、学習内容の理解度・定着度の向上、そして学びの高度化を図ることが重要である。
いわく、小学校における教科担任制の導入は、教師の持ち時間の軽減や授業準備の効率化により、学校教育活動の充実や教師の負担軽減に資するものである。
いわく、これらのことを踏まえ、小学校高学年からの教科担任制を(令和4(2022)年度を目途に)本格的に導入する必要がある。
以上、この答申の論調からは、教科担任制の推進は、教員の長時間労働を是正し、働き方改革を加速させ、かつ教員の成り手不足を解消することが主たる目的でないことは明確であります。答申書のサブタイトルにもある「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」が主たる目的であることが大前提でなければならないと考えます。
文部科学省は昨年度から教科担任制を導入し、次年度以降さらなる強化を図ろうとしています。教科担任制については、導入以前から様々なメリット、デメリットが有識者の中で語られていました。そこで、国による教科担任制が導入される以前から教科担任制に類似する本市独自の講師制度を導入し、実践している、本市の教育現場から見えてくる課題について、以下質問をさせていただきます。
質問1、教科担任制の意義について、教育長の御見解を伺います。
質問2、本市独自採用の講師についての現況を伺います。現在の採用人数、教科別を含め、正規職員、本市独自のサポーター等との業務上の違い、教員1人当たりの授業時間数(持ちごま数)がどの程度減っているのか。教員の長時間労働を是正し、働き方改革につながっているのか。学校規模や受け持つクラス数に応じた配置や人員確保について、例えば小規模校だと1人で複数学年教える可能性があり、その場合はかえって今より先生の負担が重くなる可能性があるとも聞いております。本市独自の講師採用の際、どのような配慮をされているのかを伺います。
質問3、教科担任制のやり方として、1、中学校や高校のような完全教科担任制、2、専科教員の配置による特定教科における教科担任制、3、学級担当間で授業を交換する教科担任制、4、中学校の教員が小学校で授業を行う教科担任制、5として、今述べた2、3、4の複合型があると認識しています。現在本市で行われている講師制度はどのようなやり方であり、あわせて、将来本格的な教科担任制に移行した際の理想的なやり方について、何か御展望があればお伺いをしたいと思います。
質問4、2022年度、文部科学省の加配定数は正規教員950名であり、報道どおりであると、2023年度の加配定数は正規教員1,900名と予測されます。そもそもそれだけの正規教員が集まるのかも疑問ですが、現行の小学校の教職員定数の算出方式では教員不足が生じるおそれがあると聞いております。このことにより、本市に与える影響をお伺いいたします。
質問5、教員志望者が減っている原因をどのように捉えられているのか。あわせて、教科担任制を推進することで教員の成り手不足の解消につながることが期待できるのか。本市独自の講師採用を経験した上での教育長の見解を伺います。
質問6、質問1から質問5と重複する部分もありますが、改めて、導入前からメリットとして語られていた点、デメリットとなると懸念されていた点について、本市独自の講師制度を通して見えてくる現況を確認させていただきます。
1、特定の教科の教材研究に専念できているのか。
2、複数の教員で児童を見守ることができているのか。
3、小学校から中学校への円滑な接続ができているのか。
4、教員の働き方改革につながる時間割を編成できているのか。
5、時間割の編成、調整が複雑化していないか。つまり学級担任制であれば、行事や突発的な事態等に対応する時間割調整はクラス内で柔軟に行うことができるが、教科担任制の場合は複数の教員、クラスが関わることになるため、調整が複雑化し、調整の自由度が下がり、実際に調整が難しいケースも出てくることが想定され、従前より多忙化に拍車がかかるのではないか。
6、教科の枠を超えた横断的な学びの実現が見えにくくなっていないか。
7、学級担任の先生とのコミュニケーションを取る時間が減り、児童の実態を把握しにくくなっていないか、もしくは事態の把握に時間がかかっていないか。小学生のうちは発達に差があることや、家庭事情、交友関係など、人間関係のトラブルはつきものであり、児童一人一人への伴走的きめ細かな対応はできているのか。
このことが大きな質問の1点目であります。
次に、大きな2点目の質問として、今日の学校教育が直面している課題についてお伺いいたします。この質問は、学校教育について非常に総論的な質問になりますが、今後の武蔵野市の学校教育を考える際の大切な論点になると考えますので、武蔵野市の教育現場を預かる最高責任者としての教育長の御見解をお伺いいたします。本来なら教育委員会には予算編成権はありませんが、教育長に教育版施政方針演説をしていただきたいということが私の正直な思いであります。
話を進めます。先ほども述べたとおり、教科担任制の推進の意義についての新聞報道に違和感を覚え、いろいろ調べていたら、「令和の日本型教育」の構築を目指しての答申に行き着きました。よくよく読んでみると、今日の学校教育が直面している課題として現在の学校現場をシビアに指摘している、次のような記述がありました。
「日本型学校教育が、世界に誇るべき成果を挙げてくることができたのは、子供たちの学びに対する意欲や関心、学習習慣等によるものだけでなく、子供のためであればと頑張る教師の献身的な努力によるものである。教育は人なりと言われるように、我が国の将来を担う子供たちの教育は教師にかかっている。しかしながら、学校の役割が過度に拡大していくとともに、直面する様々な課題に対応するため、教師は教育に携わる喜びを持ちつつも疲弊しており、国において抜本的な対応を行うことなく日本型学校教育を維持していくことは困難であると言わざるを得ない」と述べた上で、次の6つの課題が記載されています。
1、子どもたちの多様化、2、生徒の学習意欲の低下、3、教師の長時間労働による疲弊、4、情報化の加速度的な進展に対する対応の遅れ、5、少子高齢化、人口減少の影響、6、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りになった課題。
そしてそれらの課題点を受け、新学習指導要領の全面実施、学校における働き方改革の推進、GIGAスクール構想という、我が国の学校教育にとって極めて重要な取組が大きく進展しつつある。国においてはこうした動きを加速・充実させながら、新しい時代の学校教育を実現していくことが必要であると結ばれておりました。
それぞれについて詳細を追っていくと非常に根が深く、論点が多岐にわたり、すぐにも実践に移さなければならない課題、時間をかけて熟議すべき課題、様々な重要な課題が含まれています。かてて加えて、本市が独自に抱える課題もあるのではないでしょうか。
と、この読み原稿を書き終えた後、29日の朝刊に次のような記事が掲載されていました。「教員のなり手不足解消に向け、中央教育審議会の特別部会は28日、教員の働き方改革の推進策に関する緊急提言をまとめ、永岡文部科学大臣に手渡した。授業時間や学校行事を見直すとともに、教員の業務をサポートする支援員を全小中学校に配置するよう求めた。文科省は実現に向け、学校や教育委員会に働きかけ、体制の整備を進める」とありました。このような喫緊の具体的な動きも、今後の武蔵野市の学校教育の現場に大きな影響を及ぼすものと推測されます。
そこで質問です。今日の武蔵野市の学校教育が直面している課題と対応について、教育長の御見解を伺います。御丁寧な御答弁をよろしくお願いいたします。
次に、大きな3点目の質問として、武蔵野市交流市町村協議会以外の交流市町村との災害時相互支援の可能性について伺います。
今年の夏も、尋常ではない、全く優しくない暑さの猛暑日が続き、また大雨による自然災害が日本各地に、情け容赦ない非情な爪跡を残しました。
7月12日夜間から富山、石川両県で発生した豪雨をもたらす線状降水帯の影響で、本市の姉妹友好都市、南砺市で土砂災害が発生しました。住民に避難を呼びかけていた市議の赤池伸彦さんが、不幸にも土砂崩れに巻き込まれ、貴い命を亡くされてしまいました。故赤池市議は、武蔵野市との交流事業を大切にされ、本市の桜まつりに参加されたり、我々が南砺市利賀村で開催されるそば祭りに伺うと、温かく迎え入れてくれるなど、非常に気さくで温かい人柄でした。本日も南砺市利賀村から小学生6人が見えました。きっとこのような光景を見ていたら、心の底からの笑顔をつくってくれたものと想像できます。落合議員におかれては、議会を代表され、現地まで弔問に行かれた労に敬意を表します。改めてこの場を借りて、故赤池議員に哀悼の意を表したいと思います。
さて、平成23年7月に締結された武蔵野市交流市町村協議会災害時相互支援において、いわゆる安曇野市サミット宣言があります。武蔵野市交流市町村協議会に御縁があって所属している10の自治体で構成されています。富山県南砺市、長野県安曇野市、長野県川上村、千葉県南房総市、岩手県遠野市、新潟県長岡市、広島県大崎上島町、山形県酒田市、鳥取県岩美町、そして東京都武蔵野市であります。それぞれにきっかけになる御縁があり、長きにわたる交流の歴史があり、そしてそこに多くの思い出があるのですが、そのことを語り出すと切りがありませんので、この場では控えさせていただきます。
今回の南砺市での災害対応については、情報収集、必要な支援の確認など、武蔵野市交流市町村協議会災害時相互支援についての枠組みが生かされたのは事実であります。悲しくつらい出来事があったにせよ、よかったと思っています。
一方、8月15日に近畿を横断した台風7号。台風の北上に伴い、鳥取県では記録的な大雨に見舞われ、鳥取市では線状降水帯が発生し、大雨特別警報が発表されました。この事態を受け、内閣府は継続的な支援が必要とし、鳥取市に災害救助法を適用すると発表しました。改めて言うまでもなく、武蔵野市と鳥取県は20年にわたる交流をしています。平成15年5月に当時の鳥取県片山善博知事と武蔵野市土屋正忠市長が交わした、都市と農山漁村との相互交流宣言に端を発し、隔年で鳥取県家族ふれあい自然体験が実施されています。
私ごとではありますが、プライベートで家族と共にこの企画に参加させていただき、楽しい思い出がいっぱい残っています。そのとき民泊した方とは、今でも交流が続いています。実はその方と14日夕刻から連絡を取り合い、河川の増水、道路の寸断、避難状況等、尋常ならざる現地の様子を伝えていただきました。翌朝、全国紙の社会面トップに、その町、鳥取市佐治町の被害状況記事が写真入りで掲載されていました。当然に武蔵野市でも鳥取県家族ふれあい自然体験で民泊を受け入れている地区の状況について、情報収集されていると思ったのですが、さにあらずでありました。
結果的に、武蔵野市ができる具体的な災害支援はありませんでしたが、相互交流宣言を交わして20年来、多くの武蔵野市民がお世話になっている地区の情報収集もできていなかったことには正直驚きました。困ったときはお互いさま、武蔵野市交流市町村協議会構成自治体以外にも、丁寧な目配りが必要なのではないでしょうか。少なくとも、平素武蔵野市民が交流している自治体について、初期情報をキャッチ次第、どこの課が第一義的に現場と連絡を取り、情報収集するのか程度のことは、あらかじめ決めておく必要があるのではないでしょうか。その上でできる支援はする。武蔵野市ならできるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
そこで質問の1、自治体間交流の意義について市長の見解を伺います。
質問2、武蔵野市交流市町村協議会以外の御縁のある、つまり武蔵野市民が平素様々な形でお世話になっている市町村との災害時相互支援体制構築の可能性について、市長の見解を伺います。
以上、壇上からの質問とさせていただきます。御答弁のほどよろしくお願いいたします。