12583◯25番(川名ゆうじ君) それでは、今回の一般質問は、能登半島地震の経験を反映した防災計画策定、日本版DBS、教科書採択と教育委員の関係について、特に教育委員会の公正性、道義的・倫理的な在り方について、この3つで質問させていただきます。
1番目、能登半島地震の経験を反映した防災計画策定について。
今年1月に発災した能登半島地震で被災された方々に、まずはお見舞いを申し上げます。被災地には、この4月に輪島市、珠洲市、内灘町へ視察をさせていただきました。能登半島地震の被災地へ訪問してはいけないような雰囲気が今なお残っているように思いますが、現地の知人などに聞くと、道路が1本しかなかった時期、初期の段階のことであり、今では、宿泊先はなく道路は混んではいるものの、まずは現状を見て体験してほしいということも言われたこともあり、伺ったものです。現地には2日間だけでしたけれども、やはり現地に行かないと分からないことがたくさんありました。発災から4か月たっていても復旧には程遠い状況で、現地で生活している人たちはかなり疲れ切っている様子で、先が見通せないことでの不安を口々に話されていました。
現地では、輪島市議会へも、短時間ですが、伺いましたが、議員自身が被災者となることで、議会活動にも影響が出ているとのことでした。議会BCPとも関係してくることですが、このことは別の機会にするとしても、武蔵野市で想定されている大災害とは条件が異なる面などはありますが、現地を視察し、関係者からの調査などを含め、この震災で得た知見、経験を本市の防災計画にも反映すべきと考え、以下を質問いたします。
1、能登半島地震について本市で参考にすることは何と考えているか、伺います。
2、本市の地盤とは異なると考えていますが、現地では上下水道の寸断が大きな課題となっていました。特に、本管は復旧できても、家庭や事業所などとの接続箇所が壊れ、復旧が進んでいない実態がありました。地域防災計画では上水道の断水率や下水道の管渠被害率が想定されていますが、ここには家庭内と本管との接続についての破損は想定されているのかを伺います。
3、被災地では、家庭内の管渠については自己負担とされていました。その後、補助金対応ができるようになっていましたけれども、そのことや、工事事業者が不足したこともあり、上下水道の復旧の妨げとなっていました。これらのことは想定されているのかを伺います。
4、上下水道の一部が寸断されることで家庭やビルのトイレが使えなくなる課題が出ていました。また、下水管の損傷がない場合でも、下流域で損傷すると結果として使えない実態もありました。本市の場合、市内での耐震化が進められていることは評価をしますが、水道では都水、下水では下流域での管の耐震化が進められていないと機能を発揮できないことになります。現状はどのように進められているかを伺います。
5、現地ではトイレが大きな問題となっていました。多くの自治体では災害時に簡易トイレや凝固剤で対応することを求めていますが、発災直後はすぐに交換できたとしても、上下水道の復旧が遅れると簡易トイレや凝固剤の数が少なくなり、結果として他人や自らの汚物の上に重ねて対応していく、こういうことをせざるを得なかったという経験例を伺いました。このようなことをしていくことで、実は体調に大きな影響を与えている、こういう実態も伺いました。このこともあるのか、本市では、避難所に行かなくても済むように身近な公園などに災害用トイレを順次整備していくとされ、本市のサイトには災害用トイレの整備のページがあり、防災広場、公園など、災害用トイレの整備状況が令和2年4月現在として掲載されています。現状での整備状況と、この図では境5丁目など不足している地域があると読めますけれども、今後はどのようにしていくかを伺います。
6、マンホール直結型ではないトイレの場合、衛生車──これはバキュームカーのことですけれども──で対応することになりますが、下水が普及したことで昨今はこの衛生車の台数が少なくなっていると聞いています。本市の場合、マンホール直結型ではない災害用トイレの場合、衛生車で回収することが求められますが、現状で汚物処理が可能なのかを伺います。
7、本市では家庭での携帯トイレの備蓄も推進していると市のサイトには書かれています。現状での備蓄率と今後の目標値について伺います。災害・仮設トイレ研究会という民間団体があり、この団体の調査では、2017年から3年ごとに調査を行っているのですけれども、家庭での携帯トイレの備蓄率は2017年で15.5%、2020年は19.5%、2023年で22.2%と伸び率は低く、備蓄率は十分ではないことが分かります。この率は飲物などの備蓄率の50%の約半数ぐらいとなっていて、実際に起きた場合、すごい懸念される数字となっております。そこで、本市の状況を確認するために伺いたいと思います。
8、非常用や携帯トイレを使用する場合、処理はどのようにして行うと想定されているのでしょうか。おむつの場合は、排せつ物はトイレに流してくださいと、ごみ分別表には書かれていますが、トイレを使えない場合にはどうしたらいいのでしょうか。凝固剤を使い、可燃物として処理することになりますが、大災害の場合、収集がすぐにできるとは考えられません。家庭で保管することになりますが、どのように保管すればよいと市は考えているのでしょうか。また、このことの周知はされているのかを伺います。
9、高層マンションでは、給水管、排水管が破損している場合や接続している下水管が使えない場合にはマンション内で逆流するとされています。このような場合にも携帯トイレが必要になり、排せつ物の保管が必要になってきます。この逆流や保管について、周知は市民にされているのかを伺います。
10、被災地での非常用や簡易トイレは犯罪とも密接に関係をしていました。また、トイレは人間の尊厳の問題として考えておくべきとの指摘も伺いました。そこで、災害用のトイレについて、犯罪防止や使用方法、設置場所など再検討が必要ではないでしょうか。御見解を伺います。
11、能登半島地震では、自治体が所有しているトイレトレーラーの活躍が注目されていました。車椅子への対応が可能で全て洋式でもあること、太陽光パネルとバッテリーを備えていることから自ら発電し電気を供給することが可能となっており、実際に利用している人からも好評でありました。1台当たり2,300万円から2,600万円となる価格の問題がネックとなっていますが、補助金やクラウドファンディングで資金を調達する自治体も出てきています。横浜市では、民間企業から寄付を得て購入をしていました。首都直下型地震から命を守るとは、小美濃市長の選挙公報にも書かれている言葉です。トイレトレーラーは、市民の尊厳、命を守ることへの大きなツールになるとも言えます。ふだんはどこに置いておくかの課題もありますが、例えば友好都市と共有することなども考慮し、本市も導入すべきではないかと考えますが、御見解を伺います。
12、被災地では、倒壊した建物でも所有者が分からず処理ができないことが大きな問題となっていました。法改正が検討されているとは聞きますが、本市の場合、マンションも含めて所有者を把握し、倒壊した場合でも対応ができる状況になっているのかを伺います。
13、輪島市、珠洲市では、ボランティア団体と行政との情報共有、ボランティア団体との連絡、連携、ボランティアへの情報提供などを行う中間組織とも言えるボランティア団体が担っていました。このような形態は近年の災害では有効となっており、両市では市役所の中に場所を提供し、連携しながら被災者支援に当たっていました。本市ではボランティアセンター武蔵野がこの支援を担い、実際に行うことが想定され、実際の訓練も行っており、ここも見させていただきました。この対応については評価をするところですが、今回の中間支援ボランティア組織は、他市のボランティア組織とも連携し、支援物資や炊き出し、市民への支援を効果的・効率的に届けることなどを行い、市や市の外郭団体の職員の負担軽減ともなっていました。このような中間組織と言える団体との連携を視野に入れていくべきと考えますが、御見解を伺いたいと思います。
14、被災地の避難所での物資、これは保管されているもの、支援された物資も含みますけれども、この物資は、自宅で避難している人、自主避難している人には渡せないと考えている人もいたことで現地では混乱があったことを聞いてきました。また、支援が必要な避難所の情報が広がらず支援が届かない例や、交通の利便性が高いところは毎週のように支援が届く一方で全く届かないところもあったことを聞きました。このように、支援の情報を整理し、発信する仕組みが必要ではないでしょうか。現状ではどの課が担当するのか、上記中間ボランティア組織と連携することでの対応も考えてはいかがかと思いますが、御見解を伺います。
15、現在開会されている国会で、地方自治法の改正案が成立する見込みとなっています。成立すると、内閣は自治体へ直接指示が可能となり、自治体職員への指示も可能となります。このような場合、防災計画に影響が出てこないのでしょうか。防災は市長がトップとなり指示をしますけれども、市長の指示ではなくて、国が直接指示することになります。このようなことも想定しなくてはいけないと思いますが、御見解を伺います。
16、本市職員も被災地へ派遣されていると聞きます。被災地の現状や本市での対応が必要なことも考えるために報告会を開催することや、現地の受入れ態勢も勘案の上、視察なども行うべきではないでしょうか。熊本地震では行っていましたので、御見解を伺いたいと思います。
17、武蔵野市地域防災計画(令和4年度修正)の震2ページに計画の前提があり、「近年の災害教訓についてもできる限り反映させている」と書かれています。しかし、能登半島地震は今年に発災したこともあり、反映はされていないのではないでしょうか。震4ページに計画の修正があり、「災害対策基本法第42条の規定に基づき、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを改定(修正)する」と書かれています。地域防災計画は膨大な量でもあり、全面改定をするまでは必要ないと考えますが、毎年検討を加えと書かれている以上、能登半島地震の知見を反映するために、早期に見直し、もしくは追記などの対策を行うべきと考えますが、御見解を伺いたいと思います。
続いて、大きな2番目、日本版DBSについて。
日本版DBS法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)が成立する見込みとなっています。法律の施行は2027年と見込まれており、今すぐではありませんが、施行された場合、学校設置者や民間事業者に前科確認義務を課し、職員の前科を照会させ、本人だけではなく事業者にも交付することになり、このことで情報漏えいのリスクが懸念されています。このことだけではなく、義務ではない学童クラブ、スポーツクラブ、家庭教師やベビーシッターなどの個人事業主が含まれていないこと、不起訴や未遂、辞職により処分が課せられていない場合などは対象にならないことも課題とされており、実効性がどこまであるのか、職業選択の自由への懸念なども指摘されています。これらのことから、現状での本市の見解を以下質問いたします。
1、法律に対して、懸念も含め、評価を伺います。
2、学校、保育園は義務とされていますが、学童クラブなどは任意となっています。武蔵野市の財政援助出資団体などで行われている事業においても職員への照会をするのか、伺いたいと思います。
3、短期の職員、例えば6か月以下の雇用、アルバイトなどについても照会をかけるのでしょうか。例えば、セカンドスクールの生活指導員、ジャンボリーのサポートスタッフ、あそべえや学童クラブのアルバイト、学生ボランティア、学校支援協力者、学校事務・学校用務のアシスタント職員等々、多種多様な方々が子どもと接する仕事を行っています。この方についての対応をどうするのかが懸念されますけれども、市としての方針を伺います。
大きな3番目、教科書採択と教育委員の関係について。
福岡県のある自治体で教育長の親族が教科書発行会社に勤務中に教科書採択をしていたことで、文科省は、採択に疑念が生じかねないとして、採択手続の公正性確保の徹底を求める異例の通知を出し、ここには教科書発行者と関係を有する者が教科書採択に関与することのないよう留意することと書かれています。この問題に対して福岡県教育委員会は、採択に影響はなかったが、教育委員会の運営に問題があった。地方教育行政法は知っているべき法令。疑念を招くことのないよう遵守を徹底すべきだったとコメントしたことが報道されています。地方教育行政法には、教育長が3親等内の親族と利害関係のある議事に参与することが禁じられており、教科書採択においても同様とされています。また、教育委員会では、教科書採択に直接の利害関係を有する者などは当該委員を解任することができると規定し、教科書選定では関係者が関与しないようにも定めている自治体が多くあります。本市の場合も、武蔵野市立小学校及び中学校教科用図書採択要綱に、委員が採択に直接の利害関係を有する者であること、そのほか委員として不適当であると認められる事由があるときは当該委員を解任することができると規定しており、同様の体制を取っております。
この通知が出された背景には、法律を知っていなかった行政の過失だけではなく、少子化により冊数が減少していることから教科書出版社の営業活動が過熱化し、教員など教育関係者の贈収賄事件となったこともあります。このこともあり、業界団体である教科書協会は、自主ルールとして、教員らを一律に採択関係者と位置づけ、教科書への意見聴取などの名目で対価を支払うことを禁じることも行われています。昨今、教科書出版関係者と教科書を採択する教育委員会の関係性が問われているとも言えます。そこで、以下を質問いたします。
1、子どもたちへ大きな影響を与える教科書採択は、公平・公正に行い、疑義を持たれないように行うべきと考えますが、御見解を伺います。
2、通知には、教科書採択に直接の利害関係を有しないまでも、教科書発行者から個別に協力ないしは意見徴収の依頼を受け、著作・編集活動に一定の関与を行うなど、特定の教科書と関係を有する者を選定審議会の委員または調査員として選任することは適当ではないと書かれています。執筆者は当然として、意見を聞かれた者も適当ではないと厳しく指摘をしています。このこともあり、教科書採択の委員に利害関係者を入れないことは、さきのように武蔵野市では要綱で定めています。ですが、教科書を実際に採択する権限のある教育委員に対しては、法的には定められていません。法律として規定されているのは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第11条の7で、教育長は、教育委員会の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、もしくは自ら営利を目的とする私企業を営み、または報酬を得て、いかなる事業もしくは事務にも従事してはならないと規定しています。報酬を得ているとは教科書の執筆で印税を得ていることも含まれるとすれば、報酬を得ている、いかなる事業、事務にも従事してはならないと規定の対象になると考えられないでしょうか。教育委員会が認めれば、教科書の執筆者で印税を得ている利害関係者でも教育長にしてしまうことができますけれども、これを行ってよいのでしょうか。また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の14条には、先ほど述べたように、教育委員会の教育長及び委員は、自己、配偶者もしくは3親等以内の親族の一身上に関する事件または自己もしくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については、その議事に参与することができないと規定しております。つまり、教科書の執筆者はこの議事に参与ができないことになります。利害関係者を入れたとしても、議事では退席することが法律では規定されていることになります。教科書は小・中学校の教育の最も基本であり、重要と考えれば、退席を求められる人物が適任なのかが問われると考えます。それとも、武蔵野市の教育に教科書は重要ではないのでしょうか。退席すればよいと考える、あるいは退席する人を教育長、教育委員にしていいのかが問われていることになります。そこで、法的に利害関係者を入れることは可能ですが、しかし、道義的・倫理的に、教科書出版社と関係ある人、教科書編集者、執筆者など関係が深い人が教育長、教育委員となることがよいのかと考えなくてはいけないと思います。公正・公平性に疑義が持たれる可能性があると考えますが、御見解を伺います。
以上、壇上での質問を終わります。御答弁をお願いいたします。