12821◯19番(橋本しげき君) 日本共産党の橋本しげきでございます。今回の一般質問、私は、地方自治法改定問題について、駐輪場の整備についてと題して、大きく2点の質問をいたします。
まず大きな1つ目に、地方自治法改定問題についてです。
2022年1月に設置された第33次地方制度調査会は、2023年12月21日に、「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」を岸田首相に提出しました。この答申を受けて政府は、今年3月1日に地方自治法改定案を閣議決定し、衆議院に提出しました。5月30日には衆議院本会議で賛成多数で可決され、参議院に送られています。
この地方自治法改定案は、以下に述べるような極めて重大な問題を含んでいます。改定案では、大規模な災害、感染症の蔓延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例を定めています。この特例として、国が地方自治体に補充的な指示を出せるとされています。これは、個別の法律で規定するのではなく、一般法である地方自治法において、自治事務に対する国の指示権の行使を可能にするものです。また、改定案では、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が実際に発生した場合だけでなく、発生するおそれがある場合にも指示権を行使できるとするなど、国が指示権を行使できる場面が大幅に拡大されています。さらに、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態や発生するおそれがある場合という文言は漠然としており、指示権が乱用されるおそれが極めて大きいと言わなければなりません。
政府は、コロナ禍において、国と自治体間の調整連携が不十分だったことを指示権の範囲を拡大する理由としています。しかし実際には、学校に対する一律の休校要請など、国の判断がかえって自治体の業務や住民の生活に混乱を招いた実例もあります。
また、日本弁護士連合会が政府に対して提出した意見書に記されている例として、熊本地震の例があります。熊本地震の際、体育館の中に入らずに車の中で生活している方の窮状がメディアに取り上げられたことを受けて、当時の防災担当大臣が、避難者を体育館に入れるようにと言ったことに対して、現場の実態に基づき危険性を十分に把握していた熊本県知事は、これを拒みました。その数日後に震度7の揺れに見舞われ、体育館の屋根が落下しました。仮に国の指示に従っていたら、多数の死傷者が発生していたと考えられます。災害の際は、報告された情報しか持っていない国よりも現場のほうがより多くの情報を有しているため、現場の判断のほうが正しい場合が往々にしてあります。限定的な情報を後追いで把握する立場にある国に指示権を認め、国と地方の見解が異なったときに国に従うように義務づけるのは誤りであると言わなければなりません。
さらに重大なのは、有事の際も、国が地方自治法に基づいて自治体に指示権を行使することが可能になるということです。現在の有事法制においては、国が自治体に対して是正の指示を行えるのは、国民保護法による避難、誘導、救援と、特定公共施設利用法による港湾、空港の利用に限定されています。また、国による指示や代執行に至るには、総合調整と意見を申し出る手続が求められており、有事においても国の強制を最小限にして、可能な限り手を尽くすべきとの一定の抑制が働いていると考えられます。
ところが、地方自治法改定案では、武力攻撃事態にあってはもちろんのこと、武力攻撃予測事態ですらない段階であっても、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生するおそれがある場合と国が判断すれば、自治体に対して網羅的に指示権を行使できることになってしまいます。つまり、有事における国の自治体に対する統制を一気に強化し、自治体を丸ごと戦争に動員することを可能にする内容となっています。このことが住民の平穏な生活の破壊につながることは明らかであり、指示権の拡大は、平和主義の観点からも重大な問題があります。
憲法改定の論点として、緊急事態条項の創設が主張されています。今回の地方自治法改定案は、緊急事態条項創設の憲法改定の先取りと言えます。緊急事態条項の内容の一部を地方自治法という法律の改定によって実現して既成事実化するものであり、立憲主義、基本的人権の保障、議会制民主主義の観点からも到底認められない危険なものであると言わなければなりません。以上を踏まえて、以下質問をいたします。
1点目の質問です。日本国憲法が規定する地方自治についてです。戦前の大日本帝国憲法には地方自治の規定はありませんでした。戦前の中央集権的な体制の下で、自治体は侵略戦争遂行の一翼を担わされました。その反省から、日本国憲法は、第8章に独立の章を設けて地方自治を明記しました。憲法第92条には、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」とあります。憲法が規定する地方自治の本旨は、住民自治と団体自治の2つによって構成されていると言われています。住民自治とは、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという民主主義的要素です。団体自治とは、地方自治が政府から独立した団体の下で行われるという自由主義的要素です。住民自治と団体自治の理念は、それぞれ憲法第93条と憲法第94条で具体化されています。憲法第93条では、第1項で、「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」と規定し、第2項で、「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」と規定し、地方自治体の議会の設置及び地方議会と執行機関の直接公選制による団体の機関の民主化を定めています。憲法第94条では、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定し、地方自治体の自治権を認めています。そこで、日本国憲法第8章に地方自治が規定されている意義について、市長の見解を伺います。
2点目の質問です。1999年に成立し2000年に施行された、いわゆる地方分権一括法についてです。それまでの旧地方自治法では、機関委任事務という、法律や政令により地方自治体に委任された事務が存在し、国の指揮監督を受けることになっていたため、地方自治の本旨に照らして問題があるとされていました。そのため、いわゆる地方分権一括法では、機関委任事務を廃止し、新たに法定受託事務と自治事務の区分を設けました。法定受託事務は、国が本来果たすべき役割に関わるものと、都道府県が本来果たすべき役割に関わるものの2種類あり、いずれも法律や政令で定められるものです。法定受託事務は、従来の団体委任事務や機関委任事務のように国の事務とされていたのとは異なり、自治体の事務とされています。また、自治事務は、地方自治体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものです。
いわゆる地方分権一括法に関連して以下3点質問します。なお、質問通告の1)と2)において表現を一部入れ替えますが、質問自体は変わりません。
1)いわゆる地方分権一括法では、地方分権を掲げながら、機関委任事務を法定受託事務として事実上温存し、国による指示、代執行という自治体への強力な関与の仕組みを法で定めました。また、国と地方の役割分担の名の下に、地方自治を縮小したり、自治体の財源を削って機能を弱めたことなど、多くの問題が残りました。それでも、国と自治体は主従関係ではなく対等・協力の関係とされ、地方自治を発展させる方向性が示されました。
2020年4月1日に施行された武蔵野市議会基本条例では、前文に、「いわゆる地方分権一括法の施行により、地方のことは地方で決める市民自治の時代を迎え、地方議会には、社会の変化に対応し、市民に分かりやすい市民自治の要としての役割がより強く求められることになりました。」と記述されています。地方自治を発展させる方向性が武蔵野市議会基本条例にも示されているわけです。そこで、国と自治体は主従関係ではなく、対等・協力の関係とされたことについて、市長の見解を伺います。
2)現行の地方自治法における国の地方自治体に対する関与についてです。法定受託事務に対する関与については、法律またはこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認めるときにできるとされています。つまり、国は法令違反の場合等に自治体に対して是正の指示ができるということです。しかし、自治事務に関する国の指示については、国民の生命、身体または財産の保護のため、緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合と、特に必要と認められる場合に限定して、個別の法律で根拠を定めることになっています。つまり、一般原則として、自治事務については、国は個別法の規定がない限り、是正の要望は出せても、指示はできません。これが現状です。これらのことについて、市長の見解を伺います。
3)今述べたように、国が法定受託事務や自治事務を通じて地方自治体の事務に関与する場合、法律や政令の根拠が必要です。地方自治法245条の2にあります。これは法定主義の原則と言われます。また、国の地方自治体に対する関与は、必要最小限のものにするとともに、地方自治体の自主性や自立性に配慮しなければなりません。これは地方自治法245条の3第1項にあります。これを必要最小限度の原則といいます。このように、地方自治法上の規定からして、法定受託事務についても、自治事務についても、国の関与は最小限でなければならないと考えますが、市長の見解を伺います。
3点目の質問です。先ほど述べたように、今回の地方自治法改定案では、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に、国が地方自治体に補充的な指示を出せるというものです。この法案では、法定受託事務と自治事務の関係を無視して、地方自治のあらゆる事務に対して国が指示権を行使できるようにしようとするものです。これは、地方分権改革への逆行であり、分権から集権への逆流であると考えますが、市長の見解を伺います。
4点目の質問です。国の補充的な指示の必要性についてです。現行法では、一般に国が指示権を活用できるわけではなく、指示権を活用できる場合は限定されています。例えば災害対策基本法では、内閣総理大臣の権限として、地方自治体も含めた公共機関に対して必要な指示ができると定めています。感染症予防法でも、厚生労働大臣が感染症の発生の予防や蔓延防止のために、都道府県知事が行う事務に対して必要な指示ができると定めています。このように個別法で決まっているわけですけれども、地方自治法改定案では、国の補充的な指示について、想定外の事態に対処できるようにするということで、個別法ではなくて地方自治法に一般的に指示権を置くことを規定しています。この件に関して、以下2点質問します。
1)個別法で対応可能なのに法改定しようとしていることについて、政府はまともに説明ができません。つまり、立法事実がありません。このことについて市長の見解を伺います。
2)地方自治法に国の補充的な指示の規定を置けば、指示権の活用は一般的なものになります。つまり、個別法で限定されている指示権を越えて一般的に指示ができるとなれば、個別法の規定自体が無意味なものとなり、個別法の存在意義がなくなります。あまりにも乱暴なやり方であると考えますが、市長の見解を伺います。
5点目の質問です。国の補充的な指示の要件についてです。大規模な災害、感染症の蔓延、その他の場合に国の指示権が発動されることになり、限定がありません。大規模な災害と感染症の蔓延は例示されていますが、その他については限定がないということは国も認めています。そうなると、国の指示権は無限定であるということになり、国の裁量はかなり広いものと考えられますが、市長の見解を伺います。
6点目の質問です。国の補充的な指示の手続についてです。国と地方自治体の連携協力を考えた場合、住民に最も近い市区町村の現場からのボトムアップ型にしないと、地方自治体の実情を無視・軽視した有害な仕組みになる可能性が高いと思われます。国の一般的な指示権が行使できるようになってしまった場合、地方自治体の意思を無視したり軽視したりする指示権が行使される懸念があると考えますが、市長の見解を伺います。
7点目の質問です。国が強制力を持って都道府県や市区町村の行政実務に指示できるという一般的な法規範を設けることは、地方自治の充実発展を損なうことは明らかです。国が指示権を行使して地方自治に介入することは、日本国憲法が規定する地方自治の本旨に反することであると考えますが、市長の見解を伺います。
8点目の質問です。地方自治法改定案について、全国の知事や市区町村長などの首長から多くの懸念の声が上がっています。最近では、6月13日に佐賀県知事が、指示権が将来なし崩し的に適用され、地方自治の根幹を壊してしまわないか危惧すると、乱用への懸念を示したと報道されています。また、日本弁護士連合会は、1月18日に、「第33次地方制度調査会の『ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申』における大規模な災害等の事態への対応に関する制度の創設等に反対する意見書」を岸田首相に提出し、3月13日には、「地方自治法改正案に反対する会長声明」を発表しています。これらの声を踏まえ、国に対して地方自治法改定案の問題点について意見を上げることを求めますが、市長の見解を伺います。
次に、大きな2つ目に、駐輪場の整備についてです。この質問は、過去にも一般質問で取り上げたテーマですが、市長が替わりましたので、改めて市の対応について伺うものです。
コロナ禍の2021年度に、公共自転車駐車場──以下、駐輪場という──の利用体系が変更されました。変更点を振り返ってみます。
1点目に、一時利用料金の見直しと、それに連動した定期利用料金の大幅引上げです。駅からの距離に応じて100円で利用できる一時利用の時間を短縮しました。例えば三鷹駅中町第2駐輪場では、24時間100円が12時間100円となり、一時利用で長時間利用する場合は負担増になりました。定期利用の抽せんが外れて一時利用を1日14時間以上利用している方は、1回100円から200円に倍になったことになります。2点目に、定期利用の3か月・6か月の長期割引を廃止しました。1か月ごとに支払うことになりました。三鷹駅北口で最も定期利用台数の多い武蔵野タワーズ地下公共駐輪場の場合、地下1階の下段ですと、年間1万800円の引上げとなり、引上げ率は1.5倍となりました。
3点目に、大学生を学生割引対象から外し、障害者等も負担増になりました。学生料金の対象は高校生までということに変更され、大学生や専門学校生は、学生割引ではなく一般料金となりました。同じく武蔵野タワーズ地下公共駐輪場の地下1階の下段の場合、大学生の定期利用料金は、1か月分1,800円が2,700円になり、引上げ率は1.5倍となりました。6か月払いで比較すると、6か月の長期割引が廃止をされたため、市内大学生は9,800円が1万6,200円になり、引上げ率は約1.65倍になりました。市外大学生は、9,800円から1万7,400円になり、引上げ率は約1.78倍になりました。
障害者や生活保護受給者の減額料金をなくし、改定後の学生と同じにしたために、これまた同じく武蔵野タワーズ地下公共駐輪場の地下1階の下段の場合、市内在住者は1か月1,500円が2,200円に約1.47倍、市外の方は1か月1,500円が2,400円に1.6倍になりました。このほかにも、市外居住者に対する定期利用料金の割増し率を10%から25%に上げるなどしたため、結局これらにより、駐輪場の利用料金は近隣自治体よりも高くなりました。
今年度から2年間かけて、自転車等の利用に関する現状課題等を踏まえ、自転車等の駐車対策や利用環境の整備方針、安全利用の方策、自転車等の活用等を推進するために、自転車等総合計画の改定が行われることになっています。また同様に、今年度から2年間かけて、地域公共交通の現状、課題等を踏まえ、市民の生活と移動を支援し、かつ持続可能な地域公共交通を実現するために、地域公共交通網形成計画の改定も行われます。
以下、駐輪場の在り方に関する幾つかの点について質問します。
1点目の質問です。市内三駅周辺の駐輪場の定期利用、一時利用のそれぞれの現状の利用状況について、市長の見解を伺います。
2点目の質問です。定期利用と一時利用の考え方についてです。2021年度から行われた駐輪場の利用体系の見直しにおいて、定期利用の台数を大幅に減らし、一時利用の台数を増やしました。その際、定期利用の料金を大幅に引き上げたために、定期利用の利用者が減っていると考えられます。この点について、市長の見解を伺います。
3点目の質問です。利用体系の見直しの際に、駐輪場によっては100円で利用できる一時利用の時間が短縮をされています。通勤通学などで駐輪場を利用する場合、定期利用ではなく一時利用の駐輪場を長時間利用すれば、大幅な負担増となります。この点について、市長の見解を伺います。
4点目の質問です。利用体系の見直しの際に、定期利用の3か月、6か月の長期割引が廃止され、これにより、利用者の負担増となっています。長期割引の復活を求めますが、市長の見解を伺います。
5点目の質問です。学生、障害者などの利用料減免の考え方についてです。利用体系の見直しの際、大学生は学生扱いではなく一般料金となりました。障害者の利用料金も引き上げられました。学生、障害者などの利用料減免を行うべきだと考えますが、市長の見解を伺います。
6点目の質問です。2020年4月に策定された武蔵野市自転車等総合計画41ページ以降には、市内三駅周辺の駐輪場の整備目標台数が書かれています。吉祥寺駅では1万4,100台、三鷹駅北口では7,300台、武蔵境駅では1万400台が整備目標台数とされています。次期計画策定に向けて、今後の駐輪場の確保についてどのように考えるか、市長の見解を伺います。
7点目の質問です。今年度から2年間かけて自転車等総合計画の改定が行われる予定ですが、この2年間にどのような進め方で計画の策定が行われるのでしょうか。自転車等総合計画策定までの今後の進め方について、市長の見解を伺います。
以上、大きく2点について答弁を求めまして、壇上からの質問を終わります。