13872◯19番(橋本しげき君) 日本共産党の橋本しげきでございます。今回の一般質問、私は、災害時の避難所の在り方についてと題して質問いたします。
昨年は、関東大震災が起こってからちょうど100年目という節目の年でした。来年1月17日は、阪神・淡路大震災が起こってからちょうど30年になります。都市型の大震災は多くの教訓をもたらしました。また、今年は1月1日に能登半島地震が発生しました。今なお被災している方がたくさんいらっしゃいます。さらに、首都直下型地震も心配されています。地震だけではありません。台風や大雨などの風水害や火山の噴火など、様々な災害が起こる可能性があり、実際日本のどこかでこうした災害が頻繁に起こっています。そして、こうした災害時には、誰もが避難所生活を送る可能性があります。
内閣府は、避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針を作成しています。さらに内閣府は、その指針の下に避難所運営ガイドラインを作成しています。そのガイドラインの冒頭には、以下の記述が書いてあります。「避難所は、あくまでも災害で住む家を失った被災者等が一時的に生活を送る場所です。公費や支援を得ての生活であることから、「質の向上」という言葉を使うと、「贅沢ではないか」というような趣旨の指摘を受けることもあります。しかし、ここでいう「質の向上」とは「人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送ることができているか」という「質」を問うものであり、個人の収入や財産を基に算出される「生活水準」とは全く異なる考え方であるため、「贅沢」という批判は当たりません。本ガイドラインは、避難所において「避難者の健康が維持されること」を目標に、その質の向上を目指すものです」とあります。このように、国でさえ避難所の質の向上を言わざるを得ないほど、日本の避難所の改善が必要とされているのです。
一たび大きな災害が起こると、避難所には多くの人がやってきます。例えば1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震による阪神・淡路大震災では、兵庫県の避難者数は最大31万6,678人で、避難所数は1,153か所でした。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災では、全国の避難者数は最大約47万人でした。2016年4月14日に発生した熊本地震の避難者数は、最大19万6,325人でした。今年1月1日に発生した能登半島地震の避難者数は、最大5万1,605人でした。避難者が発生するのは地震だけではありません。2019年10月10日から13日にかけての東日本台風における避難者数は、最大23万7,008人でした。このように多くの被災者が避難所にやってくる事態が発生した場合、被災者を受け入れるのにふさわしい避難所の在り方がどうなっているのかということが、被災者支援の観点から大変大事になってきます。
災害時においては、避難所以外の場所に避難する場合もあります。熊本県が行った熊本地震に関する県民アンケートでは、避難した場所──これは複数回答ですが──として一番多かったのが自動車の中で、68.3%もありました。2番目に多かったのが市町村が指定した避難所で26.8%、3番目に多かったのが親戚・知人宅で24.7%でした。自動車の中に避難した方に対して、その理由──これも複数回答──を聞いたところ、余震が続き、車が一番安全と思ったためが79.1%もあります。また、プライバシーの問題により、避難所より車中避難のほうがよいと思ったからが35.1%、避難所が満員で入れなかったからが10.3%など、避難所に避難することを避けたり、避難所に入れなかったりする例も多く見られました。
また、東日本大震災に際して、特定非営利活動法人イコールネット仙台が3,000人の女性を対象に行ったアンケートでは、避難所生活で感じたこととして、次のような声が寄せられたということです。寝るスペースもない。洗濯機もなく着替えもないため、同じ服装で過ごした。いびきや寝言がうるさい。プライバシーがないため、家族で大事な話ができない。狭い場所で男女子どもが一緒ではつらい。ペットの毛でアレルギーを起こし、かゆみやせきがひどかった。車中避難のため食料がもらえなかった。寝るのも食事も同じ空間なので、衛生上心配だった。歩行困難の祖母を連れていたのでトイレが困った。乳児を連れて避難、母乳が止まり、ミルクをあげようにも、哺乳瓶もミルクを溶かすお湯もなく困った。女性のリーダーがいてほしかった。介護を必要とする配偶者を連れて避難、気を遣ったなどの声です。避難所生活がいかにストレスを抱えた生活となるかが分かります。
災害時の対応については様々な論点があると考えられますが、今回は災害時の避難所の在り方について以下質問いたします。
1点目の質問です。武蔵野市地域防災計画──以下、地域防災計画といいます──における避難者数の想定についてです。地域防災計画震災編11ページにおける想定では、武蔵野市における避難者数が3万861人となっており、そのうち避難所避難者数が2万677人、これは市の人口の約14%に当たります。避難所以外への避難者数が1万184人となっています。市内の避難所は、市立小学校12校、市立中学校6校、都立高校2校のいずれも体育館等となっており、2万人を超える避難者がこれら合計20か所の避難所に避難してくるならば、1か所当たり約1,000人の避難者が来ることになります。
1)2万人以上の避難所避難者を受け入れる体制がどうなっているのか、市長の見解を伺います。
2)避難所に避難者が密集することは、避難所生活が劣悪になるだけでなく、感染症のリスクを高めます。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、いわゆる3密を避けることが重要とされました。そこで、避難者1人当たりの面積をどのくらい確保できると想定しているのか、市長の見解を伺います。
3)避難所に多くの方が密集したり、避難所のスペースが足りなくなる場合、宿泊施設を借り上げるなどの対応が必要になると考えますが、市長の見解を伺います。
2点目の質問です。避難所の生活環境についてです。
1)冷たく硬い床に1日中座っていると、足腰に大きな負担になります。たまったほこりにウイルスや細菌が付着し、感染症のリスクが高まります。床から30センチ以上の高さを確保した段ボール製の簡易ベッドの場合、床よりも8度も表面温度が高いと言われています。体調を悪化させないために、快適に就寝できる寝具等(ベッド、毛布など)の確保が必要であると考えますが、市長の見解を伺います。
2)プライバシーが確保されない空間にいること自体が非常に大きなストレスとなります。間仕切りなど、プライバシーを確保できるような環境を整備すべきだと考えますが、市長の見解を伺います。
3)女性の避難所生活についてです。能登半島地震では、間仕切りがなく、着替えができない、トイレが男女共用で、夜は照明も少なく、怖くて使えず、我慢して体調を壊すなどの声がありました。過去の災害においては、避難所で女性が性被害に遭うという事例が幾つも報告されています。女性の視点を生かした避難所環境の整備が重要であると考えますが、市長の見解を伺います。
3点目の質問です。避難所での食事についてです。
例えば、2018年の西日本豪雨では、4か月間も毎日、朝に冷たいおにぎり、お昼に同じ菓子パンを出し続けた避難所もあったといいます。ワンパターンの非常食で、健康を害する状況があります。温かい食事が避難者の助けになるのは当然のことです。一方、市のホームページでは、「災害時の避難人口を約3万2,000人と想定し、クラッカー・アルファ米・缶詰などの食料、毛布・マット・紙おむつなどの生活必需品、救助工具・仮設トイレなどの資機材を備蓄しています」とあり、市内の防災倉庫に収納されています。
1)避難所以外で避難している方も含む約3万2,000人に対して、どの程度の分量の食料が備蓄されているのか、市長の見解を伺います。
2)地域防災計画震災編442ページによると、「原則として、1日目はクラッカー等すぐに食べられるものとし、それ以降は可能な限り炊出しによる米飯給食等、順次充実した内容で供給していく」とあります。同じく地域防災計画震災編449ページでは、「市は、震災後およそ4日目以降、原則として米飯の炊き出しにより給食する」とあります。阪神・淡路大震災において、避難所避難者が一番食べたかったものは野菜だったという調査があります。バランスのよい食事が被災者の救済と支援につながると考えます。被災者の健康状態を考えれば、できるだけ栄養のある食事を提供できるようにすることが必要であると考えますが、市長の見解を伺います。
4点目の質問です。避難所のトイレについてです。
避難所におけるトイレの問題は大変重要です。内閣府は、避難所におけるトイレの確保・管理ガイドラインを作成していますが、それだけトイレ問題を重視しているということだと思います。武蔵野市においては市立小・中学校18校の各避難所に、下水道直結型の災害用トイレが10基ずつ設置されています。また、都立高校2校を含む避難所20校に携帯トイレが備蓄されており、学校内の既存のトイレに携帯トイレを併せて使用するようになっています。
1)避難所に必要なだけのトイレが確保されていると考えるか、市長の見解を伺います。
2)トイレの安全管理や衛生管理はどうなるのか、市長の見解を伺います。
5点目の質問です。福祉避難所についてです。
地域防災計画震災編379ページによると、「福祉避難所とは、高齢者や障害者などで、一般の避難所やおもいやりルームでの生活が困難で、特別の配慮やケアを必要とする災害時要援護者を対象とした避難所」であるとされています。市内の高齢者施設17か所と障害者施設4か所の計21施設が福祉避難所に指定されています。なお、おもいやりルームとは、一定の配慮が必要な避難者のために、避難所内に一般避難所スペースとは別に設置される福祉避難室のことです。そこでさらに必要な方が福祉避難所にその後行くということになります。
1)地域防災計画震災編350ページでは、災害時要援護者への対応として、高齢者、障害者、乳幼児、妊婦、通学の小・中学生等、外国人が対象となっています。一方、災害時要援護者対象事業の対象者は、要介護度3以上の高齢者、障害者、これは身体障害者手帳1・2級の第1種を所持しているなど、一定の制限があります。それから、それ以外で支援が必要と認められた方とされています。そこで、福祉避難所の対象になっている災害時要援護者の定義について改めて確認したいため、市長の見解を伺います。
2)福祉避難所は学校避難所と連携して運営するため、直接福祉避難所に行っても入所できないとされています。まず学校避難所に行き、そこで要配慮者トリアージを行って、避難者の振り分けを実施するとされていますが、福祉避難所に避難する必要があると思われる方が適切に入れるようなトリアージの手法や福祉避難所の受入れ体制になっているのか、市長の見解を伺います。
6点目の質問です。避難所運営の長期化についてです。
過去の震災の例を見ると、避難所生活が数か月に及ぶ例もあります。阪神・淡路大震災の場合には、神戸市では避難者数が最大23万6,899人いました。1か月以上たった3月1日の時点での避難者数は15万7,852人、2か月以上たった4月1日時点の避難者数は5万1,261人、3か月以上たった5月1日の避難者数は3万6,399人と、減ってはいきますが、半年以上たっても1万人以上が避難する事態が続きました。東日本大震災の場合は、先ほど言ったように全国の避難所避難者数は最大47万人でしたが、半年以上たっても3万人近くの方が避難所生活を送っていました。被災者の生活ができるだけ早く改善されることを望みますが、しかし実際には避難所生活が長期化する可能性がある下で、避難所避難者の立場に立った長期間の避難所運営をどう考えているのか、市長の見解を伺います。
7点目の質問です。想定外のことが起こり得ることについてです。
以上、現在の地域防災計画の想定の下での質問でしたが、実際は想定を超えることが起こり得ます。例えば2016年の熊本地震では、熊本市内で最大11万人の避難者が発生しました。避難所への避難者数の最大想定を5万8,000人としていたため、想定の倍近い避難者の発生で、指定避難所に入り切れない人が避難してきました。また、約3万6,000人の避難者を想定した備蓄計画だったため、備蓄物資も大きく不足しました。
1)このように想定を超える避難者が発生する可能性があることについて、市長の見解を伺います。
2)私は、昨年9月7日の震災対策についての一般質問で、想定外のことが起こり得ることも考えるべきだと述べました。あらゆる可能性を排除しないことが必要であるし、想定を超えたことが起こったときにどう対応するかということも考えておく必要があると考えますが、市長の見解を伺います。
8点目の質問です。欧米の避難所との比較についてです。
イタリアの避難所の例がよく紹介されます。イタリアは地震や津波が起き、火山の噴火もあるなど、日本のように災害の多い国です。イタリアでは、災害時にはボランティアの方々が避難所を設営、運営しています。ボランティアは全国で30万人いるとのことです。公的な大きな備蓄倉庫が各地にあり、それ以外にも災害ボランティア団体が大きな備蓄倉庫を持っています。避難所として、歩いて入れるほどの大型テントが広場に、家族ごとに設置されます。テントは国が全国の拠点に整備しています。テントの中にはカーペットが敷かれ、人数分の簡易ベッドや冷暖房装置も設置されます。トイレやシャワーは移動のコンテナ式で、衛生的です。コインランドリーや、子どもの遊具も装備されます。食事は、巨大テントでプロの料理人がボランティアで調理した温かい食事が提供されます。被災者が食事の配給を得るために長い列に並ばなくて済むように、ボランティアの方が配膳します。イタリアでは、全人口の0.5%に当たる方々に必要なテント、キッチン、トイレ、ベッドを備蓄しており、これは日本の人口の割合に換算すると60万人分に当たります。津波が想定されるシチリアでは、備蓄を人口の3%にまで増やす予定とのことです。これらの避難所の様子は、日本のような広い体育館で雑魚寝という劣悪な環境とは違います。
1)こうした避難所と日本の避難所の違いについて、市長の見解を伺います。
2)災害の際に、命は助かったにもかかわらず、その後に災害関連死という形で亡くなる例が後を絶ちません。例えば阪神・淡路大震災では、亡くなった方のうちの14%、東日本大震災では亡くなった方のうち17%が災害関連死でした。熊本地震では、亡くなった方のうち、何と79%が災害関連死でした。災害関連死や災害関連病を防ぐためには、日本の避難所の環境改善が必要です。
避難所は、避難対象地域の住民が余裕を持って入所でき、容易に行くことができる範囲にあること、できるだけふだんの生活状態に近い生活が可能な環境を整備することが必要です。避難所施設設備の改善としては、プライバシーが確保された居住空間、調理ができ、食事場所のある空間、誰もが支障なく利用できるトイレ、シャワー室、更衣室、授乳室、間仕切り、洗濯ができるようにする。ペットのためのスペース、女性用物資の確保と女性による配布体制づくり、快適に就寝できる寝具──ベッド、毛布等──の確保。利用空間全体におけるバリアフリー化、災害時でも稼働できる非常用の電源などの電力、飲料水、排水等の整備。冷暖房設備といった基本的な環境整備。在宅避難者への物資・情報等の提供。避難所における掲示物等に多言語または絵文字等、誰にでも分かる表現方法を使用するなどが必要です。国際的に見ても遅れている日本の避難所の改善が必要と考えますが、市長の見解を伺います。
9点目の質問です。スフィア基準についてです。
これは、災害や紛争の被災者に対する人道支援活動のために、国際的に定められた最低基準です。スフィア基準の正式名称は、人道憲章と人道支援における最低基準といいます。国際赤十字やNGOなどが、ルワンダの内戦をきっかけに、1997年に初版を公表し、改定されてきました。基本理念は、被災者には、尊厳ある生活を営む権利や支援を受ける権利がある。被災による苦痛を軽減するために、実行可能なあらゆる手段が尽くされなければならないというものです。また、被災者の権利を守るための4つの原則として、1、人々の安全、尊厳、権利の保障を高め、人々を危害にさらさない。2、ニーズに応じた支援を差別なく受けられるようにする。3、身体的または精神的な影響を受けた人々の回復を支援する。4、自らの権利を主張できるようにするということが示されています。
1)スフィア基準については、スフィアプロジェクトとして、内閣府の避難所運営ガイドラインにも紹介されています。このガイドラインには、スフィア基準が今後の我が国の避難所の質の向上を考えるとき、参考にすべき国際基準となりますと書かれています。そこで、スフィア基準の考え方の有効性について、市長の見解を伺います。
2)スフィア基準には具体的な数字も示されています。例えば、全ての被災者が、覆いのあるフロア面積として1人当たり最低3.5平方メートルを確保する。トイレは20人につき最低1つ必要。比率は男性用1対女性用3。水源となる蛇口は250人につき1つ必要。生存に必要な基本的な水の量は1人1日当たり2.5から3リットルであり、衛生上の行動や調理ニーズを合わせると1人1日当たり7.5から15リットル必要。洗濯施設は100人につき1か所必要。入浴施設は50人につき1か所必要。食料配布は現場調理が基本であり、1人当たり1日2,100キロカロリーが必要で、総エネルギーの10%はたんぱく質、17%は脂肪が必要など、いろいろ示されております。先ほど避難者の専有面積やトイレの確保について質問しましたが、スフィア基準に照らして武蔵野市の避難所の現状をどう認識しているか、市長の見解を伺います。
3)現状において、スフィア基準の考え方が武蔵野市の災害対策においてどのように具体化されているのか、市長の見解を伺います。
4)今後、スフィア基準の考え方をどのように具体化していくのか、市長の見解を伺います。
最後、10点目の質問です。日本では避難所運営は被災自治体任せにされており、被災した自治体職員や被災者自らが運営する実態となっています。先ほどイタリアの避難所の例を挙げましたが、イタリアでは避難所を運営するのはボランティアなど、被災者以外の人です。日本のように、被害に遭った被災者自らが避難所を運営するというのは、大変苦しく、つらいことです。自治体や避難所によって運営の在り方が違う場合、避難所の環境がよくもなったり、悪くなったりもします。国が被災者に寄り添って、もっと抜本的な支援を行う必要があります。軍事費倍増よりも災害対策を充実させることが必要です。そこで、国や都に対して、避難所運営に対する人的・財政的支援の強化を求めるべきであると考えますが、市長の見解を伺います。
以上、大きく災害時の避難所の在り方についての質問に対する答弁を求めまして、壇上からの質問を終わります。