
本間まさよ
映像ID: 2430
5158◯21番(本間まさよ君) 議案第6号 武蔵野市子どもの権利条例に賛成の討論をいたします。
世界中の子どもたちが、自分にどんな権利があるかを知り、行使し、権利を享受するためにできたのが、子どもの権利条約です。子どもたちが幸せに生きるための国際条約であり、国連で条約が採択されてから今年で34年になります。ただいま審議されています武蔵野市子どもの権利条例は、この条約や日本国憲法にのっとり行使することを明確に掲げています。国によって子どもの暮らしている社会は違いますので、できるだけ子どもが暮らしている場所に合わせて条例をつくることが大事だと思います。武蔵野市子どもの権利条例は、子ども子育て応援宣言を掲げている武蔵野市として、欠かすことのできない子育て施策の大切な条例と考えます。
最初に、本条例の制定によって、子どもの最善の利益を保障することを示したことを高く評価いたします。
条例に賛成する2点目は、当事者である子どもをはじめとした市民、関係者、市職員や議員の意見を聴きながら条例制定に臨んだ姿勢です。武蔵野市子どもの権利条例案の検討は2020年から始まりました。この3年間、条例検討委員会での議論のほかに、市民意見交換会や地域フォーラム、教育・保育関係者などへのヒアリングも行われました。中間報告に対する意見は1,614件、子どもの回答が881件と、一般意見を上回る数となりました。この傾向は素案のパブコメでも、意見提出者738人中、子ども565人、意見件数、総数1,628件中、子どもの意見件数が853件と、子どもたちの意見が多く出されていることが分かります。
しかも素案に寄せられた子どもたちの意見は、一部の大人が言う、子どもが権利を主張するとわがままになる、休む口実をつくるなどとは全く捉えていないということです。子どもを守られるのみの存在ではなく、大人と同じ意見を言える存在として位置づけているのが大事です。ブラック校則を変えようと声を上げる子どもたちが出てきました。子どもの権利条例の趣旨はこうしたところにもあります。
パブコメで出された子どもの意見を紹介しますと、もし子どもの権利がなかったら、楽しく生きられている子どもが今より少なくなっているかもしれないから、子どもの権利は重要だと思う。子どもにとって大切な権利がとても納得のできる内容で、とても安心できていいと思う。この内容は全部子どもから思いや願いを聞いたもので、とてもいいなと思った。休息、休む権利については、つらいときは休んでもいいことを知るというのはとても大事だと思うし、余裕を生めるような仕組みをつくるのが大切だと思うと述べています。
昨年11月の文教委員会に、条例素案に対する行政報告がありました。それに対して文教委員全員が意見を述べました。私は、第2条、言葉の意味の市民の項で、素案では「市内にある学校」との記述を、条例は未就学児も対象になっていることから、「市内にある育ち学ぶ施設」に変更することを求めました。パブコメでも同様の意見があったとのことでしたが、条例ではこの指摘どおりに「育ち学ぶ施設」となりました。これは私の意見だけではなく、文教委員会で出された意見が条例の中に幾つも変更として加わっていました。ですから11月の委員会で別の委員も、実に丁寧にされているというのが実感ですと感想が述べられました。条例に子どもたちの意見も反映され、市民参加で条例案がつくられたことを高く評価いたします。
3点目に、子どもの権利を保障し、子どもの安全と安心の確保、いじめの対応についてです。子どもの権利擁護委員に独立性が確保されたことは重要です。条例設置の自治体の多くは、選任された委員が子どもたちからの苦情を聞き、助言、支援及び関係機関への協力依頼などを行っています。相談で解決しない場合は、救済申立てにより、関係者等への調査に入ったり、その過程で事実関係の確認や、必要とみなされる場合は、勧告、意見表明、是正、要請などを行っています。武蔵野市においても着実に前に進めていただくことを要望いたします。
次に、条例の審議に当たり出された意見について何点か述べたいと思いました。
休息についてです。条例で言う休息する権利とは、身体的、精神的な回復のために、子どもたちが自分らしく過ごすことができる居場所を確保するとともに、必要な場合にはそうした場所で休息する権利を示しています。ユニセフが子どもの幸福度調査をしましたが、日本の子どもの3割が孤独感を感じ、諸外国と比べて自己肯定感も非常に低い実態を示し、大きなストレスを抱えていると報告されました。
これまで日本政府は5度にわたり、国連・子どもの権利委員会から、高度に競争主義的な公教育が子どもたちに過度なプレッシャーをかけていると勧告を受けています。このことが子どもたちの自己肯定感の低下などのあらゆる人権侵害を生んでいると指摘されています。子どもの脳と体、心を守り、成長過程の子どもを鍛えるためにも、休息や遊びは重要です。
長らく武蔵野市の行政に関わられた方のツイッターで、国連の条約は労働を休む権利とつぶやいていますが、これは一部を切り取ったもので、正確ではありません。国連の子どもの権利委員会は「休息に対する権利を保障するためには、子どもたちに対し、その最適な健康およびウエルビーイングを確保する目的で、仕事、教育または何らかの努力から一時的に解放される十分な時間が与えられることが必要である」と説明しています。労働だけではなく、教育や休息が必要な様々なものが含まれているということです。
次に、保護者、家庭という記述です。今、子どもたちの育つ環境は多様です。父母だけではなく、祖父母や様々な環境の中で育っている状況の中で、保護者というのが適切だと思います。家庭の役割は大切ですし、保護者が担うのは基本だと思います。しかし家庭を強調することで、貧困などに苦しむ子どもや保護者を追い詰めてしまう心配があります。しつけを理由に子どもの虐待による悲劇。文科省の調査で、自殺した子どもの置かれている状況で、家庭不和が一番多かったことも報告されています。
4月に発足するこども家庭庁は、当初こども庁だった名称に家庭が書き加えられたことで、不安と懸念が広がっています。子育ては家庭が担うべきだという自民党内の根強い意見を踏まえたものと指摘されています。親から虐待された経験がある人は、家庭に苦しめられている子どもがいることを考えてほしいと切実に訴えています。本条例を進める上で、人材の確保、養成、予算、条例の周知など、しっかりと取り組んでいただくことを求めます。
最後に、通常の業務を行いながら、1,600件以上のパブコメへの対応、一般意見等約400件一つ一つに丁寧に回答し、また市民意見交換会等の開催も複数行うなど、市民の意見を聴き、条例案を策定していただいた担当課の対応を高く評価いたします。学校現場や子ども施設の関係者は、条例制定を大歓迎すると、私のところに声を寄せてくださいました。
本条例案の成立を力にして、子どもの声を大切にする社会を実現するために、努力が至るところで開始されることを期待し、賛成の討論といたします。
なお、後ほど議題となります、この条例の継続を求める3件の陳情につきましては、早く条例を制定し、子どもたちに最善の利益を保障する、こうしたことを進めるべきだという立場から、反対いたします。
以上です。
(22番 山本ひとみ君 登壇)(拍手)