
山本ひとみ
映像ID: 2430
5159◯22番(山本ひとみ君) それでは、ただいま上程されております議案第6号 武蔵野市子どもの権利条例について、賛成の討論をいたします。この議案の内容、それから今会期で上程されたこと、そしてこれまでの経過、いずれも高く評価し、この討論の中で見解を申し述べたいと思います。
まず初めに、条例の内容について概括して申し上げます。この条例は、既にある子どもの権利を条例の形で明文化したものでありまして、8つの権利を明記しております。安心して生きる権利、自分らしく育つ権利、遊ぶ権利、休息する権利、自分の意思で学ぶ権利、自分の気持ちを尊重される権利、意見を表明し、参加する権利、差別されずに生きる権利の8つであります。子どもが権利を行使する主体であることを明らかにしていることが何よりも意義がある、そのように思います。
それは前文の中でも括弧書きで引用がありますが、その括弧書きの引用の中にはこうした文章があります。「わたしたちは、自分らしく生きるために、自分で考えて行動することができます。自分の夢を、自由に考えて決めることができます」。こうした言葉の引用のある前文が、大変すばらしいと私は思っております。
そして、行政とは別の形での人権擁護委員が置かれて、権利の侵害に対して対応ができる内容であること、ここも高く評価をしております。
それでは具体的に、制定過程から私の見解を述べていきたいと思います。
この条例の制定に当たりまして、条例の検討委員会が開かれ、公募の市民委員を含めて議論が重ねられてまいりました。素案に対する意見募集もあり、それは文教委員会でも詳しく報告がありましたが、市民説明会、地域フォーラムを開き、パブリックコメントも募集をいたしました。とりわけ子どもからは、アンケートに565人が答え、自由意見が853件もあったということは、大変意義があることだと思いました。また私ども文教委員が11月の議論で出したことが条例案に反映されたことも評価しております。
こうした形で、多くの子どもや市民の意見を聴き、それを議案に最大限反映したということを高く評価しております。とりわけ私としては、人権擁護委員が独立した役割を持つということに対して、「独立性を尊重しなければなりません」という項を追加したことや、「学校」という表現を「育ち学ぶ施設」に変更したこと、こうした点を高く評価しているところでございます。
それでは、議案の具体的な内容に関して評価できる点を述べていきたいと思います。
まず全体的なことを申し上げます。先ほど自由民主・市民クラブの方の討論の中で、子どもの養育責任が誰になるのかということが議論としてあったことが話されました。私もその点に関して申し上げたいと思います。
この文教委員会でも養育責任に関して修正案も出されまして、保護者に主たる養育の責任があることを付け加える、そういう意見がありましたが、私は付け加えるべきではないと思っております。子どもを産めば、その子への愛情や愛着の気持ちが生まれるという声がありますが、私はこのことを条例の上で明記することには賛成できません。子どもは社会の中で育っていくということを今大切にすべきであり、保護者が子どもの最善の利益を守ることができない、そういう場合もやはりあることを念頭に置くべきだと思います。
例えば望まない妊娠ということもありますし、外国籍の人の中でも、仮放免の状況に置かれている方の出産などが大変困難な中で、子どもと離れ離れになるようなケースもあります。子どもを自ら育てられないという事情の方もいるわけです。保護者を過度に強調するということは、結果的に家庭、中でも母親の責任を問うことにつながり、現状において必要なこととは思えないということを強く訴えたいと思います。
2つ目に、子どもの権利擁護委員に関して申し上げたいと思います。条例は子どもの権利擁護委員という仕組みが記載されております。私はこれまで差別や人権侵害に対して、年齢、性別、国籍、性的指向、性自認、出自、障害の有無にかかわらず、人権侵害や差別に対する苦情処理、是正勧告ができる第三者機関の設置を訴えてきましたが、この制度は年齢による差別を禁止していると感じておりまして、人権侵害があった場合に訴えることができる機関を明らかにしていくことは、大変意義があると思います。
言葉のことだけで言いますと、検討委員会ではオンブズパーソン制度という言葉も使ってもらいましたけれども、私はオンブズパーソン制度ということのほうが、より実態に即していて、市民にも分かりやすいと思っております。
そしてこの機関で最も大切なことは、行政、例えば学校とか教育委員会とは区別された機関であるという独立性、この第三者性が最も大切だと思います。仮に教育委員や学校と意見が対立したり異なっていても、それを恐れないということが大切だと重ねて申し上げ、この機能が働くように、ぜひ援助をしていただきたいと思います。
続きまして具体的な権利を申し述べます。
休息する権利です。子どもの休息する権利を明記することは、市民の中で異論もあるようですが、私は大変重要だと思います。子どもは、学習をすること、学校に行くことにストレスを感じたり、休みたいと思うときもあると思います。その際子どもが自分の意思で、保護者と相談とか同意がない場合でも休むことは問題がないと思います。学校だけが学習や生活の場とは言えないということは、教育機会確保法でも明らかになっています。今回の条例でも、学校は育ち学ぶ施設というふうに変更されております。子どもは保護者とは独立した存在であるということを制度としても明らかにした内容と、高く評価をしております。
関連した課題として、不登校の問題があります。不登校の児童生徒は、今数が増えています。昨年決算委員会の資料でも、そのときの昨年度の小学生が68人、中学生が119人、4年前は小学生が40人、中学生61人。こういう状況です。ですから、こうした児童生徒への最も公平で重要な支援は経済的支援であるということを私は訴えてきましたが、これを再度強く訴えたいと思います。子どもは進学の際に、内申書に欠席日数がどう表記されるのか、大変気にしている場合がありますので、欠席を表記しない動きが必要ではないかと思います。
また、チャレンジルームという不登校の児童生徒の居場所については、場所の問題。学校以外に置いていただきたいと思うし、お昼御飯、昼食を準備して提供するなどの改善を求めていきたいと思います。
いじめ対策についても申し上げます。いじめが起きた場合には、当事者を中心に事実を明らかにして公表し、改善に関しては、関係者が十分に関わっていくことを望んでおきたいと思います。
続きまして、私立の学校に関する対応です。武蔵野市でも私立学校、私立の学校を選ぶ児童生徒が一定数存在します。その場合にどうするのかという意見がありましたが、市外の私立学校に通う児童生徒に対して、確かに教育委員会が直接関わることは難しいと思いますが、人権擁護委員がその学校関係者に対して、起きたことを確認し、そして働きかけをしていくことは可能です。
昨年11月15日の文教委員会でも条例の素案に対する質疑がありまして、その中で答弁が担当の課長からありましたが、もう1回そこを見ますと、「子どもが、その権利が侵害されていると感じて、救済を求めてきた場合には、そのための何らかの手段を取るということは、27の権利擁護委員の仕事になってくると思います」という答えがあります。ですからこういう答えがあるということを、私立にお子様を通わせている方に対して周知をしていただきたいなと、私も感じております。
最後に、自ら意思表示ができないお子さんに対する対応も大切だと思っています。子どもが幼いとき、あるいは様々な事情で自ら意思表示ができないということもありますが、そういうお子さんに関わっている方が、お子さんに代わって意思表示ができる仕組み、アドボケーターの存在が大切になってくると思います。
最後に、体制について要望いたします。新しい制度が発足するのですから、子どもに関わる方への支援は、これからより重要になってくると思います。学校についても、教師の方も、それからほかの育ち学ぶ施設の職員の方についても、そして人権擁護委員の職務を行う方も、権利を守るためには必要な人員や予算があると思いますので、それをぜひ行政として十分確保していただくように求めたいと思います。
なお、この条例について陳情も出されておりました。陳情は関連で3件ありまして、子どもの権利条例(仮称)の審議についてに関する陳情、子どもの権利条例を継続審議とすることを求める陳情、子どもの権利条例の慎重な審議を求める陳情、以上3件はいずれも文教委員会で、賛成者なく、否決されましたが、私も今会期でこの条例が成立することを強く望んでおりますので、これまでの様々な経過も、子どもたちを含め、多くの市民から意見を聴いてきたということも鑑みまして、陳情に関しては3件とも同意できません。反対です。
以上をもちまして、本条例に賛成の立場での討論といたします。
(12番 内山さとこ君 登壇)(拍手)