5160◯12番(内山さとこ君) ただいま議題となっております子どもの権利条例、委員長報告に賛成の立場で討論させていただきたいと思います。花粉症でちょっとお聞き苦しいところがあるかもしれませんが御勘弁ください。
私は、先ほど質疑でも述べましたとおり、武蔵野市議会議員に当選して以来、子どもの権利について、度々議会でも取り上げさせていただきました。初めにこの本会議場で一般質問の際に取り上げたのは、2009年2月27日、市政への子ども参加として、子どもの意見表明の重要性、表現・情報の自由、そのためには、将来の大人としての主権者教育、シティズンシップ教育が重要であるというふうに申し上げました。これは今思い返せば、武蔵野市民科として一定結実しているというふうに思っております。
また、2012年の2月29日には、世代を超えた公共の価値を育むこととして、子どもは虐待防止法など保護される対象であって、守られなければならないというだけではなく、大人と同じ責任を負う少年法の対象の18歳になると、すぐに大人としての責任を問われてしまいますが、子どもは大人への階段を一歩一歩上っていく子もいれば、何十段も駆け上ってしまう子もいる。途中の踊り場でうずくまってしまう子もいる。そうした一人一人の子どもに目を向けていけば、10年後の武蔵野は変わっているだろうと申し上げました。
まさに今、10年が経過しました。そして子どもの権利条約を日本が批准して5年の節目ごとに質問させていただきましたが、ずっとその間武蔵野市では、子どもプラン武蔵野に子どもの最善の利益をうたい、しっかりと子どもの権利を保障していくという御答弁にとどまり、残念ながら条例の検討には至りませんでした。
2014年の12月3日に、私は、国の子ども・子育て支援法によって子育ての社会化が実現していくという方向性と、障害者基本法の改正や障害者差別禁止法の制定によって、国が障害者権利条約を批准し、共生社会へと向かっていく、その中にあって、やはり最も守られなければいけない子どもの権利、子どもの人権が、明確に自治体の中で約束事として位置づけられることが必要だと申し上げました。三多摩の中でも小金井市や調布市など、先行して実現している事例も数多くあることを、議場で申し上げました。
そして、先ほど部長答弁にもありましたとおり、松下市長になられてから、子どもプラン武蔵野の中にようやく、子どもたちが希望を持ち健やかに過ごせるまちづくりという基本施策の重点施策の中に、子どもの権利条例の検討についての文言が入り、これまで大勢の方の参加を得て、条例案が出来上がりました。
私はこの条例案について、3点、主に大きな意味で評価したい点があります。
それは1つは、子どもの権利に関する条例検討委員会、この委員長である喜多明人さんは、国内の子どもの権利、人権に関する普及啓発活動では第一人者の方であり、喜多明人さんをはじめ、検討委員会メンバーそれぞれが、子どもの実態、現場に関わる、大変子どもの心に寄り添った発言や議論をしてくださる方々だった。これがスタートとしてとても貴重だったと思っています。そのメンバーでなければ、私が思うに、この条例の中の第20条にある、子どもからおとなへの移行支援というものは、自治体の中では文言としてなかなか結実できないのではないかと思っています。
第20条では、「市は、おとなへと移行する時期の子どもが社会的自立のための支援を必要とする場合、18歳以上であってもその支援を継続して受けることができるよう、環境の整備に努めます」とあります。単なる年齢で線を引くのではなく、子どもの育ちをしっかりと見詰めてきた、そうした方々がまとめてくださった。この点を大変評価しています。
そして2つ目に、先ほどの賛成討論にありましたが、大勢の方々、そして丁寧に議論を重ねて、参加の機会を保障してきたことです。繰り返しになりますので、その点は詳しく申し上げません。
それが結実したのが、3つ目の評価する点、子どもの意見や大勢の方の声がこの条例案に詰まっているということです。質疑の中で確認しました前文は、子どもの言葉、子どもが主体となって、自分たちが暮らす社会がこうあってほしいということを述べています。この「こどものけんりってなぁに?」という、定期的に発行していただいたニュースの中でも、2022年の11月号に、この前文の言葉が紹介されています。大変力強い。私は武蔵野市の子どもの権利条例のここは白眉だと思っています。
これは条例案ではありますが、この前文の「わたしたち子どもは、未来の希望となる種で、無限の可能性や能力があり、それらを発揮することができます」と始まる部分は、武蔵野市の子どもの権利宣言であると思っています。またそのほかにも、第21条、第23条のように、先ほど質疑させていただいたとおり、子どもたちの意見や市民の声が入って、私たちが子どもの権利を保障する社会をどうつくっていくかという方向性がしっかりと示されていること、大変すばらしい条例案ができたというふうに思っています。
昨年の1月20日のことですが、私は当時文教委員会で、大野あつ子委員長の下、文教委員は喜多明人さんを招いて、子どもの権利に関する、子どもの人権についての学習会を行いました。かいつまんで申し上げますと、その中で子どもの現実から出発することが大事だというお話がありました。日本の子どもたちは海外の子どもたちに比べて自己肯定感が低い。一番大きな問題は、自信を失っていることだと言っていました。確かにそれは再三繰り返し言われていることです。この武蔵野市の子どもの権利条例で子どもの権利宣言がうたわれている。私は大変胸が熱くなりました。自信を失っている子どもたちがいたら、自分に自信を持っていいのだという励ましになる。それが同じ子どもたちの声でうたわれているのです。
喜多明人さんを招いた学習会の中では様々な学びがありました。2024年は国連のジュネーブ子どもの権利宣言が採択されて100周年の節目の年である、こうしたことを、世界中の子どもの権利に関わる活動をしてきた方々は大変重く受け止めているというお話がありました。くしくもそれは、日本が子どもの権利条約を批准して30年のメモリアルな年です。昨年の1月20日にはまだウクライナでの軍事侵攻は起きていませんでした。国連のジュネーブ子どもの権利宣言は、人類は子どもに対して最善のものを与える義務を負う、平和と子どもの権利は不可分だということをうたっています。
国際社会は子どもの権利の保障を求めています。それは平和を希求する世界の人々の願いと同じです。子どもの権利を守る、平和な社会を実現することは、人類普遍の課題です。武蔵野市でこの子どもの権利条例を策定し、施行された後、この小さな日本の自治体からも一歩一歩、国際社会と共に子どもの権利の保障、平和な社会を希求する、その思いを1つにして歩んでいきたいと思います。
権利条例は終わりではありません。ここから私たちがこのまちをどんなまちにしていくか、その第一歩になると思っています。この歴史的な瞬間にこの本会議場で立ち会えたこと、感無量の思いです。どうか大勢の方の賛成を願って、討論といたします。
(14番 藪原太郎君 登壇)(拍手)